Frontisland “Brian-R34SPL”
映画ワイルドスピードX2に登場するブライアンの乗るR34GT-Rの仕様をコンセプトにギターを作ってみようという企画です。
NOSのタンクに見立てたリップスッティックタイプのピックアップを載せてみたり、ブースター2基掛けでツインターボ仕様の配線を組んでみたりしています。
スペック
ボディ材:アッシュ+マホガニー
ネック材:メイプル+マホガニー
指板材:ローズウッド
スケール:648㎜
フレット数:26
【主要パーツ】
ペグ:GOTOH SG381 H.A.P. 07
ナット:自家製オイル浸け牛骨ナット
フレット:214H
ロッドナット:ESP ホイールナット
ブリッジ:シンライン改(ブロック付き)
ボリューム、トーンノブ:GOTHO VK3(Chrome)
LEDコントロールノブ:GOTOH VK15T(Chrome)
ジャックプレート:GOTOH JCB-2(Chrome)
バッテリーBOX: FERNANDES FER-2
ストラップピン:GOTOH EP-B2(Chrome)
LED ON-OFF:ミニスイッチ6P on-on
【ピックアップ】
フロント:SEYMOUR DUNCAN SHR-1n Hot Rails
センター:SEYMOUR DUNCAN SLS-1 LIPSTICK TUBE
リア:EMG ALX Set (Normal-space)
【コントロール】
ボリューム:EMG ABX(EQブースター付ボリュームポット)※ピックアップ付属
トーンコンデンサ:SCUD CR-022OIL
セレクター:Free-Way switch 3×3-3 6way
プリアンプブースター:EMG After Burner
【LED】
カラー:ブルー
コントロール:ON-OFFスイッチ、5パターン切替、点滅スピード調整
※パーツ名をクリックするとリンク先(サウンドハウス)にてパーツの詳細が確認出来ます。
制作コンセプト
ワイルドスピードの映画を見たときに『ブライアンのR34みたいなギターが作れたら面白いだろうな』という発想がきっかけで制作がスタートしました。
ギターとしてきちんと使えるという条件を前提に、パッと見ただけで“ワイスピ のR34”と分かるカラーリングと連想する機能を盛り込んだギター作りに挑戦しました。私も元GT-R(R32)オーナーでGT-Rには思い入れもあり仕様にも詳しいので、それらを活かしてギター制作を行いました。
完成品の外観と解説
今回一番頭を悩ませたのはカラーリングです。
車のボディサイドに入っている特徴的な青いラインをどう入れようか悩みました。悩んだ結果、正解かどうかは分かりませんがベベルドカットの部分に放射状にシルバーを残す感じで写真のような青グラデーションを入れてみました。ベベルド部の青い部分はボディエンド側からヘッド側に向かって色が薄くなるようなグラデーション方向としています。
ブリッジ後方に入れた2本のストライプラインは劇中車のボンネットのラインを表現していますが、こちらはベベルド部とはグラデーションの方向が逆でブリッジからエンド方向に向けて青い色味が薄くなるように塗料の吹き付けを行っています。
ポジションマークはアンダーネオンを連想させるブルーLEDです。
フレット数は車のエンジン形式『RB26』に合わせて26フレット仕様としました。
ここまでのハイポジションを使う機会は多くはないと思いますが、ハイポジションまでがっつり弾けるよう工夫して作っています。
ブリッジについてもRB26をインスピレーションした仕様としています。今回使用したノントレモロタイプのブリッジの場合、ボディ裏に弦止めブッシュを打ち込む施工法の方が一般的だと思いますが、今回はエンジンブロックにみたててサスティーンブロックを用いた仕様で組んでみました。
ピックガードは車の窓ガラスの色をイメージした色素材で制作しました。
ピックガードの下には車内に積まれたNOSのタンクをイメージしたリップスティックタイプのピックアップがマウントされています。
フロントピックアップは旧タイプのダンカンホットレイルを改造したものです。
パッと見はシングルコイルのピックアップのようにも見えますが、中身はハムバッカーという“羊の皮を被った狼”的なピックアップです。ポールピース穴からはカーボンのプレートが覗いていてレーシーな雰囲気をみせています。
ピックアップセレクターには車のシフトレバーのような動きをする6WAYのトグルスイッチを採用しました。
一般的なトグルスイッチでは3種類の出力パターンしか備えていませんが、このスイッチは6種類の出力パターンの切り替えが可能です。
このギターはブースターを2基搭載したツインターボ仕様となっています。ピックアップセレクターポジションに対するブースターの稼働状態はブーストモードセレクターで設定が可能です。
ネックは劇中車のGTウイングをイメージしてヘッドトップのみ着色を行いました。
0フレットとなるナットにはオイル漬けを施した牛骨ナットを使っています。
オイルは100%化学合成の自動車用エンジンオイルです。漂白ナットよりは弦の滑りが良い印象を受けました。
オイル漬けの方法ですが、ただ漬けておくだけでは浸透性が弱そうな気がしたのでオイルを加熱して煮るという作業も行っています。
ネックはヘッドトップ以外は艶消しクリア仕上げです。
ヘッド裏には劇中車のナンバーを印字しています。
GOTOHのH.A.P.仕様のペグを取り付けています。H.A.P.仕様のペグはペグポストの高さが調節可能です。車でいう車高調みたいな機能(?)です。今回は上の写真くらいな感じで高さを設定してナットへのテンションを調節してみました。通常のペグよりもナットからペグポストに向けて角度がつくので、テンションピンも必要性を感じる時が来るまでは付けないでおこうと思います。
せっかく26フレットもあるので、ジョイント部はハイフレットが弾きやすい形状を意識して作りました。
このギターはもともと24フレット仕様で設計したギターがベースとなっています。たった2本のフレットが増えるだけでネック本体の長さやボディのジョイント位置からピックガードの形状まで様々なものが変更になってしまうので、フレット数の変更は結構大変なことです。
ボディバックはガンメタにしてみました。ボディ裏を黒系の色にするとローズ指板の黒色と相まってギター全体に一体感が出て締まった印象になるような気がします。
バックパネルは縞板模様を入れてアルミ縞板調に仕上げています。バックパネル内にLED用の9V電池が入っています。写真右下の電池ボックスにはブースター用の9V電池が入ります。
ボディ裏にはABQの設定を調整する為の小窓を設けています。
青いボックスがゲインの調整用のトリマーとなっており、ブーストレベルをコントロールします。右側の3つの白いディップスイッチツマミではブーストさせる周波数の設定を行います。
ボディトップは角度を変えるとアッシュの木目が目立って見えるようになります。
弦高は12フレット上から弦下までの距離が1弦側1.2㍉の6弦側で1.5㍉になるようにセットしました。24フレット部の弦高も同じ数値となりました。
制作の様子
ネック・指板の制作からスタートします。
ネックはメイプルにマホガニーを挟み込んだ5ピース構造としました。
材構成はボンネットストライプの雰囲気を狙っています。メイプル1ピースとは違う剛性・柔軟性を持っています。
ボディシェイプやヘッドシェイプはいつも作っているものと同じ形状で作るつもりでいたので、いつもの調子で制作を進めていたら24フレットの指板を見て『おや?』っと違和感を感じました。
そうです。フレットが24本しかなかったんです。GT-RはRB26というエンジンを積んでいるので、24フレットではフレットが2本足りないじゃん!ということに気がつきました。
ということで、指板接着目前の段階でネックと指板を26フレット仕様で作り直しました。
指板だけ26フレット仕様で作り直してネックは24フレット仕様のものが使えないかとかも考えてみましたが、ジョイント位置からくるハイポジションの演奏性の問題や、指板のみ延長させた場合の剛性面でのデメリットを考慮して1から作り直すことにしました。
トラスロッドはシングルシャフト、ダブルシャフトの他、逆反り方向にのみロッドが利く1WAYのものや、逆反り・順反りの両方向に利く2WAYのもの等、色々な種類があります。
個人的にはシングルシャフトのものが好きです。
ロッドの利き方を仕込みのカーブで狙えるというポイントと、LEDを埋設するスペースが確保出来るというポイントがその理由です。
今回のネック制作ではシングルシャフトのロッドを必要な長さにカットして使っています。(上の写真はトラスロットのナットネジ山を切っているところ)
また、2WAY用のナットストッパーを使っているので逆反り順反りの両方向への調節が可能です。
ポジションマークはブライアンの車のアンダーネオンをイメージして青いLEDを入れてみました。
26フレットのLED搭載ギターを作るのは初めてです。制作の途中でサイドポジションのLEDが点灯しなくなるトラブルもありましたが、無事に復活させることが出来ました。
ボディはトップ材にライトアッシュを使用し、バック材にマホガニーを使用します。
ボディ内部は軽量化の為に肉抜き加工を行いました。ステージ上でギターを振った時のヘットの回頭性の向上を狙っています。
この程度の肉抜きによる重量変化はせいぜい300グラム程度です。個人的にはある程度重量のあるギターのサウンドが好きなので、ドンガラなホロウボディにしてしまわずに控えめな肉抜き加工にしています。
最近は軽いギターが流行のようですが、昔は『重いギターの方が材の密度が高くて良い音がする』という話をよく耳にしました。時代によって“良い”と評価されるポイントが変わっていくのもギターの面白いところですね。
積載するピックアップを決めました。
写真左から、これは旧タイプのダンカンホットレイルを改造したものです。
シングルピックアップのカバーを被せているので、見た目はシングル中身はハムの構造となっており“羊の皮を被った狼”的なピックアップとなっています。
写真中央はダンカンのリップスティックタイプです。
このピックアップをNOSのタンクに見立ててみようという試みです。ケースカバーとステッカーはネタとして作りました。
写真右はEMGのAXLです。
R34GT-Rはターボ車なので、加給によりブースト圧を上げてパワーを稼いでいます。AXLのピックアップはブースターが付属しており、ゲインを上げてブーストを掛けることが出来る為、ゲインを上げることでパワーを稼ぐことができます。というこじつけです(爆)
最初はフロントにNOSのタンクに見立てたリップスティックタイプのピックアップを載せてリアにEMGのAXLを載せた2PU仕様にしようと思っていましたが、フロントにハムを載せたくなってしまったので3ピックアップ仕様にすることにしました。
フレット数が増えて指板が伸びた分、ピックアップが載るスペース(指板エンド〜ブリッジ間)は狭くなります。なので、フロントはシングルサイズのハムを載せることにしました。また、ベースプレートの短いシンラインタイプのブリッジを使うことでリアのピックアップスペースに余裕を持たせており、一般的なギターのリアピックアップマウント位置よりもブリッジ寄りに設置しています。その為、リアピックアップはタイトさの強いサウンドの傾向になると思います。
塗装工程
今回の塗装はメタリックをシースルーで吹いて杢目がどんな感じに活きるか試してみることにしました。
木材の切れ端で試し塗りをするのが無難ですが、今回はぶつけ本番です(爆)
さすがにメタリックは透過性が低いと思うので、導管には黒のフィーラーを入れて導管が目立つようにしておきます。
シルバーメタリックで着色しました。
メタリックを薄く吹き付けただけの状態では、導管は目立ちますがメタリック感はありません。
パッと見塗りつぶされてるくらいに吹き重ねたところでメタリックっぽくなりました。
光の反射の具合で杢目の見え方が変わります。
ボディの角度を変えると、よりハッキリと黒い導管が浮かび上がります。
これはこれで面白いなと思いました。
シルバーメタリックの上からブルーを吹き付けました。
ブリッジ部分からボディエンドにかけて入れた2本のラインはブライアンの乗るR34のボンネットのストライプラインをイメージしています。
ベベルドカット部分には車のボディサイドに入っている模様を入れてみました。これが正解かは分かりませんが、これ以外にデザインが思いつきませんでした。
ブリッジ部分のストライプラインもベベルド部の模様もボディエンド側からヘッド側に向けての方向で青の濃さを変えていくグラデーション塗装にしてみました。
ヘッド裏にはナンバーやQRコードをレタリングしました。
T4U-842は劇中に登場するブライアンのR34のナンバープレートの数字です。この部分については家庭用プリンターで作成出来るエーワンの転写シールを使ってみました。
文字の周りにはシールの透明な部分が残りますが、上からクリア塗装をすることで目立たなくなります。
Made in JapanとQRコードはインレタという別の種類の転写シールです。
QRコードはこのサイトへのリンクとなっています。
トップコートにクリアを吹いて水研ぎとバフで鏡面に仕上げました。
導電塗料も塗りました。
組み込み・配線作業
フレットのすり合わせをしました。
LEDの入った26フレット仕様のギターはなかなか珍しいので完成が楽しみです。
LEDを配線しました。ボディ裏にLEDの点滅制御回路を備えています。
赤いスイッチボックスの役割は以下の通りです。
①サイドポジションLEDのON-OFFスイッチ(↑メインスイッチに連動してサイドも点灯 ↓メインスイッチを入れてもサイドのみ点灯しない)
②メインポジションLEDの点滅速度コントロール設定(↑でキャンセル ↓で有効)
③トーンコントロールの操作設定(↓LEDがOFFの時のみ有効 ↑常に有効)
トーンコントロールとLEDの点滅速度コントロールノブを同じノブで行う為、ノブの役割をプリセット出来るようにしました。
配線図
コントロール配線はこんな感じで組んでみようと思います。
ギターは車と違って出力が高ければ高い方が良いというものではありませんが、車の仕様に合わせるとブースター(ターボ)は2基掛けのツインターボとなります。
出音が良いギターになるかどうかは組んでみないと分かりませんし、うまく機能するかも分かりませんが面白そうなのでやってみることにします。
ピックアップセレクターは6ポジションのフリーウェイトグルスイッチです。
6Wayトグルが6速ミッションのシフトみたいなので使ってみることにしました。
通常のトグルスイッチは3種類のサウンドしか選択できませんが、このスイッチは6種類の選択が可能です。
とりあえずピックガードにパーツを仮付けしてみます。
今回配線を組むにあたって頭を悩ませたのはこちらの仕様書です。
私は配線を組む時は必ず各ピックアップのコイルの位相を確認します。しかしその確認した結果がメーカーの仕様書と違ったのです。初めは自分のテストした結果が間違っていたのかと思いましたが、よく見るとコイルの極性についての記載を見ると黒と白が+の表記になっているのに対して下のコネクター図の黒(+)と白(+)が結線されています。これだと逆位相接続となるのでコイル1とコイル2の互いの信号を打ち消し合うフェイズアウトなサウンドが出力される結果となってしまいます。この時点でさらに混乱しました。
「ABQ(ブースター)とセットだから逆位相の仕様なのか?」とか色々考えましたが、そんなはずはないのでもう一度実物で位相をテストし、黒(+)赤(−)ではなく黒(−)赤(+)であると判断しました。そうすれば、黒(−)白(+)の接続となり、一般的なハムサウンドが出力されるからです。
EMG製品の良いところは配線がコネクター式となっているので配線が楽なところで見た目もクールでカッコ良いです。ですが今回はコネクターを使わず配線していきます。目的は配線材を黒色に統一して配線のごちゃごちゃした感じを無くすことです。
車のカスタムでエンジンルームの配線を隠す(タックする)『ワイヤータック』というものがありますが、今回はそんなイメージで組んでみました。
透明なピックガードでなければこんなことは全く必要ありません。生産性やメンテナンス性を全く無視した見た目重視の選択です。
ピックガードへマウントされるパーツの配線が終わりました。
センターピックアップのみボディに直付けされていたりと配線本数が多いので、本体とピックガードはEMGのようにコネクター接続とすることにしました。
ピックガードを取り付けました。
センターピックアップのみピックガード下に入っていますが、意外と違和感なく感じました。
このギターはピックガードを脱着する際にネックの取り外しが必須の設計となっています。作りやすさやメンテナンス性よりも、機能面や演奏性を優先した設計となっています。
裏のパネルは艶消しブラックで作りました。
サスティーンブロックに弦を通す位置には穴をあけています。
裏のパネルはブライアンのR34の後ろのナンバープレートカバーに使われているアルミ縞板の模様を入れてみました。
弦を張ってセッティングを出します。
EMGのブースターABQと、同じくEMGのプースターであるアフターバーナーの2つのブースターを載せたツインターボ仕様のギターの完成です。
今回組んだギターの場合、ABQは全てのピックアップに対して過給を行いますが、アフターバーナーについては基本的にセンターピックアップを選択している時だけ有効となるようにしています。これはセンターピックアップだけ弦との距離が遠くて音量が小さくなるという問題を補うことを目的としています。
ブーストモードの切り替えで二つのブースターを有効にすることも出来ますが、それぞれのゲインを上げすぎると音がブローします(爆)このモードの使い道についてはこれから考えていこうと思います。
制作動画
制作の様子は動画にまとめています。