どんなに良いギターであっても調整が狂っていたら気持ちの良い演奏は出来ません。
このページでは自分で出来る簡単な調整からリペアショップで対応してくれる本格的な調整まで紹介していきます。
ギターのチューニングを合わせよう!
ギターの調整において、調整箇所の状態の確認はチューニングを合わせた状態で行うというのが基本です。なぜなら、弦が緩んだ状態と張った状態ではネックの反り具合が変化するからです。弦の緩んだ状態からチューニングをして弦のテンションを掛けた状態にしていくとネックの反りの状態は純反りの方向に動く傾向にある為、ネックの反り具合や弦高が変化します。
ネックの反りの状態が変化すると他の調整箇所にも影響して調整が狂ってしまう為、各部調整する際の状態の確認は演奏時と同じチューニングを合わせた状態で行うのが良いです。1音下げで使用するギターの場合では1音下げでチューニングを行い、角部の調整状態を確認します。
チューニングを合わせた弦のテンションが強い状態で調整を行うとパーツや弦へのダメージとなる場合がります。調整作業時は弦を緩め、作業が終わったら再度チューニングを合わせて状態や数値の確認を行うのがベストです。
ネックの反りの調整
ネックの反りの状態をイラストで表しました。
①の反りの状態は順反りです。理想の反りの状態は②のストレートに近い①の若干の純反りの状態とされています。
極端な順反りの状態では12フレット付近の弦高に対してハイフレット付近の弦高が低くなる為、ハイフレット付近でビビりや音詰まりが出やすい状態となります。ローフレットは弦から遠ざかる状態となる為、全体の弦高は高めのフィーリングとなる傾向になります。
③の反りの状態は逆反りです。ネックが順反りと逆方向に反っています。指板中央が持ち上がった状態となる為、ローフレットがビビりやすい傾向となりハイフレットは弦から遠ざかる為弦高が高くなります。
ネックの反りの確認は普段演奏する時と同じようにギターを立てた状態で行います。イラストのように1フレットとハイフレットを押さえた状態でネック中間部のフレットと弦との隙間を確認します。この時、一般的にはフレットと弦との間に若干の隙間がある状態が理想の反りの状態と言われています。
極端な純反りや逆反りの状態では全フレットの弦高バランスが悪い為、引き辛いだけでなくビビりや音詰まりが出やすいポイントが出来てしまうという問題が生じます。
ネックの反り具合が適正な範囲にない極端な純反りや逆反りの場合にはトラスロッドを調整してネックの反り具合をコントロールします。
このトラスロットの調整の作業について慣れていない方は楽器店やリペアショップで調整してもらうことをお勧めします。ネックの反りの調整は教科書通りにいかないことが多く、場合によってはロットの機構を破損する思いもよらない大きなトラブルにつながることがあります。調整に慣れている方は問題ないと思いますが、今後自分でネックの反りを調整出来るようになりたいからロッドの調整をやってみたいという方は一度リペアショップでロッドの状態を確認してもらうか、無理のない範囲で行うようにしましょう。
トラスロットについては別ページで詳しく解説しています。
→トラスロット解説ページへ行く
弦高を調整しよう!
弦高の調整方法
弦高の調整方法はブリッジの種類の違いにより様々です。
上記写真のようなブリッジは1弦から6弦まで個別に弦高を調整するタイプです。
このブリッジの場合、桃色で示したブリッジ駒(サドル)のイモネジを回すことで駒の高さを変えて弦高を調整します。1つの駒を2本のイモネジで支えていますので、弦高を調整する際には2本のイモネジにバランスよく荷重が掛かるように駒の高さを調整します。
黄色で示したスタットネジはブリッジ本体をギターのボディに固定する役割を持っていますが、ブリッジの種類によってはブリッジそのものの高さ調整の役割も合わせ持っています。基本的にはこのようなブリッジは、ブリッジプレートがボディに接地するようにセットする場合が多いですが、ギターによっては弦高を合わせる際にブリッジ駒のイモネジが可動範囲に収まるようにブリッジスタッドの高さの調整が必要なものも存在します。
フロイドローズのように各弦のサドルの高さが固定されているブリッジの場合にはブリッジスタットボルトを回すことでブリッジそのものの高さを調整し、弦高位置を合わせます。
各弦の駒の高さが固定されているフロイドブリッジですが、指板Rに弦高Rを合わせる方法としてシムを使う方法があります。
写真の弦高調整用シムはフロイドのトレモロユニットに初めからセットされているシムで、2〜5弦のサドル下に挟み込んで2〜5弦の弦高を上げることでRがキツい指板に対応させるものです。
シムは1弦と6弦のサドル下に挟み込まれないように赤い点線位置にセットします。
フロイドローズのサドル高さを個別に微調整したい場合には各弦のサドル下に個別にスペーサーを入れる必要があります。
12フレット基準で弦高を合わせる場合、12フレットはナットとブリッジの中間位置となるので、12フレットの弦高を0.1㎜上げたい場合にはブリッジ部の高さはその倍の0.2㎜上げる必要があります。
サドルの高さを個別に調整するスペーサーには0.1〜0.3mmの厚さの専用品が販売されています。
チューンオーマチックタイプの弦高調整はブリッジ両端のサムナットを回すことで行います。1〜6弦の各サドルの高さは固定されているので、ブリッジ本体を上下させて弦高を合わせます。
各弦のサドル高さが固定されたチューンオーマチックタイプのブリッジの場合、指板のRに合わせた弦高の調整は各弦のブリッジサドルの弦溝深さを調整することで行います。
サドルの弦溝加工はギター弦高を整えるとともに弦の鳴り方にも影響する作業です。各弦の弦高バランスが悪い場合や各弦の鳴り方にバラつきがある場合にはサドル弦溝の調整について、楽器店かリペアショップへの相談をお勧めします。サドル弦溝の修正は、サドル部分で弦が切れやすい等の別のトラブル解消にも繋がります。
チューンオーマチックタイプのブリッジは経年変化によるブリッジ本体の変形で、ブリッジ中央部の3・4弦が低くなる場合があります。演奏に支障がある場合にはサドル弦溝加工による弦高バランス調整、ブリッジの本体形状の矯正、ブリッジの交換等の方法での対処を行うことで改善されます。
弦高数値の目安
弦高の調整値についてはギター個体の状態や弾き手の好みによって変わってきますが、おおよその調整範囲の目安として下記の数値を基準とすると良いと思います。
6弦ギターの調整値
(12フレット上から弦下までの距離)
1弦 1.0〜1.5㎜
6弦 1.5〜2.0㎜
4弦ベースの調整値
(12フレット上から弦下までの距離)
1弦 1.5〜2.0㎜
4弦 2.0〜2.5㎜
低めの弦高
弦高は下げれば下げるほど弦がビビりやすくなり、弦を鳴らした時に振動した弦が近隣のフレットに触れてビビり音が生じやすくなります。
弦高のセッティングが低いことが原因でフレット全域で生じるサスティーンを持ったビビり音はフレット高さの不揃いが原因で特定のフレットだけビビり音が発生するものと現象そのものは同じですが、その状態を標準のセッティングとして検品・出荷しているメーカーも存在します。弦高が低いのが好みの方には非常に弾きやすいセッティングですが、そのシビアなセッティングを維持する為には定期的なメンテナンスと調整が必要です。
低い弦高のセッティングに変更したい場合には、ネックの反りの状態やフレットの状態等、ギターのコンディションが全体的に良いということが条件として求められます。
自分の好みの高さまで弦高を下げたいのにブリッジの調整範囲に限界がきて弦高が下げられない場合や音詰まり等の演奏上の不具合が発生する場合には、ネックの反りやフレットの高さ調整、ネックの仕込み角度の調整等、トータルでの調整が必要となります。
高めの弦高
弦高は高いほど弦がビビり難くきれいな音が出しやすくなる傾向にあります。人の好みによりますが、歯切れの良いフレーズが弾きやすい等のメリットがあります。
指板のRがきつい(丸みがかっている)ギターの場合、弦高が低いとチョーキングした時に音詰まりが起きやすくなるので弦高は高めに設定するのがお勧めです。
弦高を上げたいのにブリッジの調整範囲に限界がきて弦高が上げられない場合には、ネックの反りやネックの仕込み角度の調整等、トータルでの調整が必要となります。
オクターブの調整
オクターブ調整とは、フレットを押さえずに弦を弾いた”開放弦”の音に対してフレットを押さえた時の音程が合うようにブリッジのサドル位置を合わせる作業のことを指します。
開放弦でのチューニングは合っているはずなのにコード音が調和しない場合やハイフレットに向かうほどに演奏音程が狂った感覚がする場合にはオクターブチューニングが合っていない可能性があります。
弦を押さえない開放弦の音に対し、12フレットを押さえた時の音程が丁度1オクターブ分高い音になるようにブリッジサドル位置を調整します。
開放弦で”E”の音だった場合には1オクターブ高い”E”の音に合わせるということです。
チューナーを接続し、ピックアップセレクターはブリッジポジションに合わせます。
オクターブ調整する弦のチューニングを合わせます。※12Fのハーモニクス音が出せる方はハーモニクス音で合わせます。
12フレットを押さえて弦を鳴らした時の音程を確認します。
12フレットを押さえた時の音が開放弦の丁度1オクターブ上の音だった場合にはオクターブ位置は合っているのでサドル位置の調整は必要ありません。
12フレットを押さえた時の音程が低い場合は調整ネジを反時計回りに回してブリッジサドル位置をナット方向へ移動し、音程が合うポイントを探します。
12フレットを押さえた時の音程が高い場合はブリッジサドル位置を時計回りに回してナットと反対方向へ移動し、音程が合うポイントを探します。
全ての弦に対してこの作業を行い、開放弦の音の1オクターブ上の音に12フレットを押さえた時の音程が合うようにします。
ブリッジサドル位置がブリッジに固定されたギターやベースの場合、ブリッジ本体がボディに固定されていないものであればブリッジ位置を移動することで大まかにオクターブを調整することが出来ます。逆を言うと、チューニングを合わせているのにオクターブチューニングに違和感がある場合にはブリッジ位置そのものがズレてしまっている可能性があります。
ピックアップの高さの調整
ピックアップの高さは弦を基準とする為、弦高の調整が終わった後に行います。
ピックアップは弦に近づけるほどに感度が良くなりますが、近づけすぎるとピックアップの磁力に弦の振動が阻害されて音の伸びが悪くなりますので上げすぎには注意が必要です。
ブリッジ寄りのピックアップよりもフロント側のピックアップ部分の弦の振幅の方が大きくなる為、リアに比べてフロントの方が出力が大きくなる傾向にあります。リアからフロントに切り替えた時にフロントの出力が大きくて扱いづらいと感じる場合には、フロントのピックアップを弦から遠ざける又はリアのピックアップを上げることでバランスを調整しますが、ハイパワーなピックアップと非力なピックアップの組み合わせの場合にはバランスをバッチリ揃えるのは難しいので、それぞれのピックアップの良さが出る位置に合わせてあげるように調整する等、ギターの仕様によって合わせ方は様々です。
センターピックアップを備えたギターでよく見かけるセッティングの一つに、基本的にセンターピックアップは使わないしピッキングの邪魔だからという理由でセンターピックアップだけ極端に下げてしまうという方法があります。ピックガードマウントの場合、下げすぎるとネジが抜けてピックアップが脱落するものもあるので注意しましょう。
フロイドローズのようなトレモロでアームアップを行うと弦の位置はボディに対して近くなります。なので、アームアップした時にピックアップに干渉しない高さにピックアップの高さを設定する必要があります。ピックアップの高さ設定が終わったら、アームを使ったサウンドチェックも行いましょう。
写真のジャズベースはクッションマウントとなっており、ピックアップ下にクッションを入れることでピックアップの高さを保持するタイプです。スポンジの伸縮に余裕がある場合にはピックアップの高さ調整は可能ですが、スポンジが完全に潰れて伸縮しない場合には高さの調整は出来ません。この場合、スポンジを新しいものに交換する必要がありますが、定期的にピックアップ高さを変更したい場合にはスプリング入りのクッションへ交換するか、スプリングマウント方式へ改造してしまうという方法があります。
ピックアップがボディに直接ネジ止めされた、いわゆる”ダイレクトマウント”のギターには、ピックアップの高さは変更出来ない仕様のものもあります。
スプリングやクッションを介さずにピックアップがボディにガッチリ固定されたギターは、その構造ゆえに得られる独特のサウンドを狙った作りとなっている為、ピックアップの高さの調整は出来ません。このタイプのギターでピックアップの高さを調整したい場合にはボディの加工が必要となります。
トレモロのスプリング(フローティング)調整
トレモロブリッジを搭載したギターでは、ギター裏面に設置された「ホルダー取付ネジ」の締め込み具合の調整でブリッジの設置角度を調整を行います。また、スプリングの掛け方や本数の変更でギターの鳴り方が変化することがある為、好みのサウンドに近いセッティングを探るのも面白いかもしれません。
スプリングホルダーにはスプリングテンションの調整をレンチ1本で行えるタイプのものや、弦をロックして脱落を防止する構造のものがアフターパーツとして存在します。
トレモロブリッジのセッティングにはブリッジ本体がボディ面に接地している「ノンフローティングタイプ」と、ブリッジ本体がボディに触れておらず弦とスプリングとの張力のバランスで浮いている「フローティングタイプ」の2種類が存在します。
ノンフローティング仕様
ブリッジのベースプレートの底面部分をボディに密着させたアームダウン専用のセッティングです。
ブリッジ本体がボディにベタ付けの状態なのでブリッジのユニットはアームダウン方向にしか可動しません。なので、このセッティングの場合にはアームアップを行うことは出来ませんがアーム操作を行わない状態ではブリッジ角度は固定されているのでチューニングが合わせやすいというメリットがあります。
トレモロスプリングのテンションはチューニングを合わせた状態でブリッジがボディ面に接地するようにホルダー取付ネジの締め込み具合を調整します。
トレモロユニットを搭載しているにもかかわらずアームを全く使わない場合にはホルダー取付ネジを強めに締め込んでおくか、スプリングの本数を増やして張力を増やすことで固定式ブリッジとして使用することが出来ます。
スプリングには張力の強いものと弱いものとの種類があります。スプリングテンションのフィーリングを調整したい場合には張力の違うものに交換するというのも一つの方法です。
フローティング仕様
シンクロタイプのトレモロでより自然なビブラート感を出したい場合には、写真のようにチューニングを合わせた状態でブリッジ後方が3ミリ程度浮くようにハンガー取付ネジを調整してブリッジ後方をフローティングさせます。
ロック式トレモロでフローティング仕様のギターの場合、アームアップ方向に可動させたときに干渉するボディ部分は逃し加工が施されており、ブリッジ本体は2本のスタッドを支点に弦とトレモロスプリングの張力のバランスの取れた位置にフローティングした状態となります。
ロック式トレモロでフローティング仕様のセッティングを出す場合、基本的にはチューニングを合わせた時にブリッジが弦と並行(又はボディトップ面と並行)となるようにスプリングのテンションを調整します。ブリッジのセット角度でピッキングアタックの出方が変わる為、ピッキングアタックをしっかりと出したい場合にはほんの少しだけ後ろ下がりのセッティングにするのが有効です。
ストップテールピースの高さ調整
レスポールタイプのギターに多く使用されるチューン・オー・マチックタイプのブリッジは、ストップテースピースの上げ下げでブリッジにかかる弦のテンションをコントロールすることが出来ます。
「テンションが強い方がアタックの感じが好き」とか、「テンションが弱い方がサスティーンの感じが好み」とか、人によって好みはあると思いますので上げめであっても下げきった状態であっても演奏に支障のない範囲であれば好きな位置に調整して問題ありません。
スタットボルトが上がった状態と下がった状態ではボディの鳴り方が変わる場合が多いので、テールピースのスタッド高さについてはテンションとサウンドの両方に作用する調整となります。
テールピーススタットをロック式に交換することでもサウンド特性の変化を狙うことが出来ます。ロック式のスタットは弦交換時にテースピースの脱落を防止したい場合にも有効です。
テールピーススタッドはテンションを掛けた状態でマイナスドライバーを使って無理やり回すと頭のマイナス溝が変形する恐れがあります。調整の際には弦を緩めてテンションを掛けない状態で上げ下げを行いましょう。
テースピースを下げきってもテンション感が足りない場合、弦の通し方を工夫することで更にテンションを上げることも出来ます。
①の一般的な弦の張り方に対し、②は反対側から弦を入れてテースピースの下をくぐらせてブリッジとの高低差を稼ぐ方法です。
③は調整ではなく改造となりますが、ボディを加工してブリッジ直近部で裏通しにしてしまう方法です。特に低音弦はテンション感が弱く感じられる為、低音弦のみ裏通しにするという方法もあります。
②と③は特殊なパターンです。弦のテンション感を変えたい場合には弦そのものの種類やゲージの変更も有効な手段です。
フレット調整
フレットの高さが不揃いになると近隣の高いフレットに振動した弦が過剰に触れてビビりや音詰まりの症状が出るようになります。
そのような場合には『すり合わせ』という作業を行い全体のフレットの高さを整える調整を行います。また、フレット頂点を整えることで音が綺麗に鳴るようになったりチョーキングがスムーズに出来るようになったりと、フレットの調整はサウンドや演奏性に影響する作業です。
フレットの消耗が激しい場合にはフレット修正では対応できない為、フレットの交換が必要になります。演奏に支障のあるほどフレットの状態が悪い場合には楽器店やリペアショップに相談することをお勧めします。
フレットの摩耗
ギターのフレットは弦との接触で摩耗して低くなります。部分的に著しく摩耗してその部分だけが低くなった場合にはビビりや音詰まりに繋がります。
そのような場合にはフレット全体を削って高さを整えることで問題を解消することが出来ますが、フレットの削りシロが無い場合にはフレットの交換が必要となります。
フレットの摩耗は目視で確認できます。見た目に消耗が確認出来たとしても演奏上問題が無ければ基本的にはすり合わせによる調整は必要ありません。何年もメンテナンスしていない個体できちんとしたセットアップを行いたい場合にはフレットの調整を行うことでフィーリングの良い状態に持っていくことができます。
フレット浮き
何かしらの要因でフレットが浮いてしまった場合、浮いたフレットが振動する弦に著しく接触してビビりや音詰まりの原因となります。
フレット浮きは修正が必要です。フレット浮きをそのままにしてすり合わせを行った場合、一時的にはビビりや音詰まりは解消されますが、浮き具合が変化して再度不具合が発生する場合が多いので原因に合わせて適切な処置が必要です。
ナット弦溝の調整
量産品のナットの弦溝はマージンをとって高めに設定されていることがある為、適正な位置に修正することで弦を押さえやすく音程のピッチも合いやすい状態になる場合があります。また、メーカーが出荷時に張っている純正弦と自分が使いたい好みの弦の太さが違う場合、ナット溝が狭くて弦が収まらずに弦が浮いて弦高が高くなってしまったりトレモロアームを使った時に弦がスムーズにスライドしないでチューニングが狂いやすくなったりすることがあります。特にベースの場合、例えば同じ『ライトゲージ』でもメーカーによって弦の太さが違うことがあります。細い弦溝に太い弦を張った場合、最悪ナットが割れてしまうことがあるので注意が必要です。
逆にナット弦溝が広い場合には弦を鳴らした時の鳴り方が「ミャーん」と締まりのない感じになる場合があります。
また、ナット溝が基準値よりも低くなって解放でビビる場合には、ナット弦溝の修正ではなくナットそのものの交換作業が必要となります。
使用する弦がいつも同じであれば、その弦に合わせてナット溝を調整することで下記のメリットがあります。
ナット弦溝の調整加工には工具や技術が必要になります。専用の工具を使ったとしても、イメージ通りに仕上げるには道具を上手く使う技術と経験が必要です。
場合によっては溝が広くなりすぎたり、溝を深く切りすぎてナットの交換が必要となる状態になる等のリスクがあるので、このナット弦溝の調整やナットの交換作業については楽器店やリペアショップに作業を依頼することをお勧めします。
指板の調整
上記イラストはネックの指板面の状態を表しています。①はローフレットからハイフレットまで指板面が直線的で理想に近い状態です。
イラスト②の波打ちの状態や③の捻れの状態の場合、症状が軽微な場合にはトラスロッドの調整とフレットの調整で演奏に支障がない範囲にもっていくことが出来ますが、症状が酷い場合にはフレットを抜いて指板面を直線状態に削り直さないと改善されません。この指板面の直線状態を整える作業を『指板修正』と言います。
フレットのすり合わせでは対応できない指板の狂いに対しては指板修正を行うことで指板面の調整を行います。
逆反ってしまったネックを順反り方向に修正するネック修正では、ネックに熱を与えて順反り方向にネック自体をを矯正する方法やアーチ状となった指板面上を直線的に削り直す方法等があります。指板面上の逆反り、ねじれ、波打ちの症状がひどい場合には楽器店やリペアショップでの調整又は修理の相談をお勧めします。
フレットレスの指板調整
フレットレスの場合にはフレットがありませんので音詰まり等の症状がある場合にはフレットではなく指板面の状態を調整することで対処します。
ネックの仕込み角度調整
ボルトオンタイプのギターの場合、ネックの反りの状態を適正な範囲に調整した状態で弦高調整を行なった場合に弦高を上げたくてもブリッジの可動域が限界に達してしまって弦高が上がらない場合や、逆に原稿を下げたくてもブリッジの可動域が限界で弦高が下がらない場合にはネックの仕込み角度(取付角度)を調整することでブリッジ位置での弦の高さを調整することが出来ます。
シムを使った角度調整
ブリッジ部の弦高を上げたい場合の調整方法の一つとして、ネックポケットに『シム』というスペーサーを入れて角度を調整する方法があります。
この方法であればボディやネックを加工することなくジョイント角度を調整することが出来ます。
シムを入れるとサウンドは変化する場合がありますが、中にはシムを入れているサウンドが好きだからという理由でシムを入れる通な方も居ます。
ネックポケットの角度調整加工
ネックポケット底面を角度をつけた状態に削り直すことによってブリッジ部の弦の高さを調整する方法です。
写真のギターはネックの仕込み深さと角度を計算し、機械を用いてネックポケットを削り直した状態のものです。段になった外側の部分は手加工で整えます。
まとめ
どんなに良いギターでもセッティングの状態が悪いと演奏性も悪く良い音は出ません。
ギターやベースの調整は奥が深く、ここにまとめたもの以外にも様々なものがあります。
ベストなセッティングというのは大まかな指標はあるもののこれといった定めは無く、ギターの個性であったり演奏者の好みによって正解は変わります。
精度が求められる部分やリスクのある調整場所は信頼できる楽器店やリペアショップで調整をしてもらうのが安心ですが、自分で調整出来る部分は色々と調整して試してみることで自分好みのセッティングが見つかるとギターがより楽しくなるのではないかと思います。