ハムバッキングピックアップ

二つのコイルを備えたハムバッキングピックアップはスイッチによる配線の切替えで複数のサウンドレパートリーを持たせることが出来ます。

ハムバッキングピックアップをスイッチでコントロールしてシングルサウンドの出力を行うコントロールをコイルタップ(タップ)と言います。このページでは、コイルタップのコントロール方法と配線方法を紹介しています。

コイルタップとは

コイルタップとは、ハムバッキングピックアップの2つのボビンのうち、どちらか片方のボビンをキャンセルしてシングルコイルとして機能させることを指します。
ハムバッキングピックアップの2つのボビンにスイッチを接続し、直列配線となる通常配線の状態と、片方のボビンのみを使用してシングルコイルとして機能させる切替えを行う配線コントロールが組まれたギターであればコイルタップサウンドの出力が可能です。

スイッチの切替えでシングルとハムの両方のサウンドが出せる為、ライブなどでギターを持ち換える手間を省くことが出来ます。

ピックアップの構造や他のパーツとの兼ね合いでストラトのシングルピックアップのようなサウンドは出ませんが、ハムバッカ―サウンドとシングルサウンドの両方の出力が可能となるので、1本のギターで幅の広い表現力を持たせることが出来ます。
コイルタップに対応したリード線を備えたピックアップであれば、ミニスイッチやスイッチ付きポットの追加改造でコイルタップの配線を組むことが出来ます。

ハムバッカー リード線パターン

リード線の種類によってはコイルタップ配線が不可能な場合があります。
イラストはハムバッカーのリード線パターンを記したものです。
①②④はコイルタップ配線が可能です。
①は4芯リード線(4Conductor)と呼ばれるタイプで、どのようなコントロールにも対応します。
②と④はピックアップ部分でボビン同士の結線部分が処理され、1本のタップ線(イラスト水色の線)として出力されています。
③と⑤はピックアップ根元部分で結線処理されており、タップコントロール用の出力線が無いのでタップコントロール配線は不可能です。

コイルタップの配線例

1ハム ピックアップ ボリューム トーン 配線図 

上記配線図は1ハムのスタンダードな配線例です。ポット・ミニスイッチは裏から見た状態です。
ピックアップのアース線(ベースプレート・リードアース)は記載を省略しています。アース線がある場合はノイズ対策の為にポット裏等へハンダ付けしてください。

タップ配線には様々な方法がありますが、上記配線をベースに何種類かコイルタップ配線方法を紹介していきます。

タップ配線例 ①

ハムバッカー ミニスイッチ タップ ギター配線図

ハムバッカーをタップさせる配線パターンは複数存在します。一番簡単な方法はボビン同士を結線したタップ線をスイッチを使ってアースへ落とすこちらの方法です。

イラストは6ピンのON-ONスイッチを使用してハムバッカーをタップさせる配線図です。
ボビン同士を結線している線とアースがスイッチで繋がった時にピックアップ右側のボビンが無効化されます。この配線方法がタップ配線のなかで最もポピュラーな方法ではないでしょうか。

他のタップ配線と比べた場合、スイッチの不具合に対して音が全く出なくなるリスクが低い配線方法です。

タップ配線例 ②

ミニスイッチ タップ配線図2

配線例①はコイルをショートさせるキャンセル方法ですが、こちらの配線例②は回路をオープンさせることによりコイルキャンセルを行う配線方法です。タップ時には左側のボビンのホットをオープン状態にして無効化します。

「これでもタップ回路は成立しますよ」という配線例です。配線を組む際にこの方法でなければ成立しない場合以外には自分はあまり採用しない配線方法です。

タップ配線例 ③

ミニスイッチ タップ配線図3.1

こちらの配線は4芯リード線の場合にのみ配線が可能な方法です。
スイッチはプッシュプルのスイッチ付きポットで組んでいます。トーンノブを引き上げた時に左側のボビンがキャンセルされるコントロールとなっています。
使わないボビンはオープンキャンセルされ、キャンセルコイルはアースへ接続される配線方法です。

配線例①の方法に比べて出力信号の劣化が少ない傾向にある配線方法で、配線例②よりもノイズを拾いにくい配線方法であり、タップ配線方法の中ではシングルピックアップの配線条件に最も近い配線方法です。

タップ配線例④

ON-ON-ONのスイッチを使用することでハム(series)とシングル(split)だけでなく、2つのボビンの並列サウンド(parallel)の出力切替えを行う配線です。

1つのピックアップで3種類のサウンド出力が可能な配線コントロールです。

タップ配線例 ⑤

ON-OFF-ONのミニスイッチを使ってハムバッカ―・シングル右側・左側の3種類のサウンドを切り替えるタップコントロールです。

ダンカンのSHPRのように2つのボビン特性が大きく異なる場合に有効な配線例です。

タップ配線例 ⑥

SHPR タップandタップ スイッチポット配線図

配線例④はミニスイッチを増設してタップ切替を行う仕様ですが、ミニスイッチを増設するスペースが無い等の場合にはスイッチポットを使用してハム・シングル(右ボビン)・シングル(左ボビン)の切替えを行うことも出来ます。

スイッチポットは2つ必要となり、切替えパターンは4パターンとなりますので、残りの1パターンはそれぞれのボビンがパラレル出力になるように配線を組んでいます。

オートタップ配線

オートタップとは、レバースイッチによるピックアップセレクトに加え、任意のレバーポジションにおいて連動してコイルタップが行われるように配線が組まれたコントロールです。

オートタップ例①

HSHオートタップ(ハーフトーン)

レバー位置が↖︎(リア&センター)又は↗︎(センター&フロント)のポジション時にリア又はフロントのピックアップが自動的にタップされる配線コントロールです。
一般的な5WAYのレバースイッチは回路を2つ持っています。上の配線図では右側の回路をピックアップのセレクターに使用し、左側の回路をタップのコントロールとして設定しています。ミックスポジションを選択した時にはハムバッカ―のタップ線がアースへ接続されてタップされる仕組みです。

オートタップ例②

2ハム-オートタップ ギター配線図

2ハムのピックアップセレクターは3WAYのスイッチで組まれている場合がほとんどですが、5WAYのスーパースイッチを使用することでタップサウンドの出力を追加することが可能です。
スイッチを増設する必要もなく、シンプルで操作性の良い配線コントロールです。

カスタムタップ配線

単純なタップ配線ではタップさせた時のサウンドに物足りなさを感じてしまう場合もあります。
そのような場合には、少し変わった配線を行うことで通常のタップサウンドとは違ったタップサウンドを出力させることも出来ます。

カスタムタップ配線例①

通常のタップサウンドは片方のボビンを無効化するものですが、完全に無効化しないことでハムサウンドのテイストを残したタップサウンドを作る配線方法です。

カスタムタップ-ギター配線図

抵抗を使ってタップ線からアースへ逃がす信号の量をセーブした配線でPRS等が採用しているタップ方法です。
ハムバッカーとタップ時の音量差を少なくしたり、非力なタップサウンドに少しパワーを持たせる効果があります。
リアピックアップに2.2kΩを使用し、フロントピックアップに1.1kΩを使用したコントロールはPRSのタップで使用されている抵抗値と同じ数値です。

ポットや半固定抵抗を使うことでタップ時のハムサウンドの強さを任意にコントロールすることも可能です。

カスタムタップ配線②

通常のタップサウンドは片方のボビンを無効化するものですが、両方のボビンを直列回線から並列配線に切り替えてシングルコイル2つを同時出力させる配線コントロールです。

SSH-1V1T-parallel-Guitar-Wiring

プッシュプルのスイッチ付きポットを使用した場合、ノブを引き上げることでハムバッキングピックアップが直列配線から並列配線に切り替わります。
通常のタップサンドでは何か物足りないという場合にはこちらの配線方法が有効かもしれません。

複合的なタップコントロール

Frontisland-SSH-Custom-Guitar-wiring

スイッチ付きポットやミニスイッチでピックアップ単体のタップ切替を行わせるだけでなく、5WAYのレバースイッチの出力パターンを丸ごと変えてしまおうという配線コントロールです。

トーンノブが下がったⒶの状態では、5WAYスイッチは一般的なSSHのピックアップ切替えコントロールとなっていますが、トーンノブを上げたⒷの状態では、リアピックアップのタップサウンドをはじめ、通常のコントロールでは出力不可能なピックアップの組み合わせでのサウンドを得ることが出来ます。

ストラトサウンドに寄せたタップ配線

まず最初にシングルとハムのタップのサウンドの違いについて説明します。

ストラトのようなシングルコイルギターサウンドに対し、ハムバッキングピックアップを積んだギターのタップサウンドはストラトのようなサウンドにならない場合がほとんどです。
理由としては、そもそもギター本体の造りが違ったり、ピックアップの磁力やコイル特性が違ったり、ボリュームやトーンのコントロールに使用されているポットやコンデンサの容量が違うことが多く、それらの違いが出力されるサウンドに影響をするからです。

ハムバッカーを積んだギターはポットに500kΩ、コンデンサに223の容量のものが使用されることが多いのに対し、3シングルのストラトタイプの一般的なコントロールはポットに250kΩ、コンデンサに473が使用されます。
ポットの抵抗値は高いほど高音域のロスが少なくなります。
500kΩのポットに比べ、250kΩのポットを使用したコントロールでは高音域が控えめのマイルドなサウンドになる傾向になります。また、コンデンサも223に比べて473の方がより広い高音域をカットする傾向にあります。

ギター本体の構造やピックアップの磁力やボビン特性を変えることは難しいですが、タップしたピックアップにコントロールのパーツの容量を合わせることでストラトのテイストに近いシングルサウンドの出力を狙うことは出来ます。

ストラトサウンドに寄せたタップ配線例

SSH-500K250K-Potentiometer-wiring

ハムの時とタップ時でコントロールを切り替える配線を組んでみた場合、上のような配線となります。
こちらはストラトを意識した配線コントロールとなっており、タップ時にはリアピックアップのトーンコントロールがキャンセルされます。
配線は複雑でメンテナンス性は超最悪ですが、タップ時にはストラトと同じポット・コンデンサ容量のコントロール回路に丸ごと切り替わります。なので、フロント、センターのサウンドもハム時とタップ時では違うものとなります。

プレイヤーにとって、ここまでしなければ得ることが出来ないサウンドがあるのであれば組む価値が高い配線コントロールだと思います。

タップするボビンの選定

ハムバッキングピックアップのボビンはどちらをキャンセルしても間違いではありません。メーカーの配線図に指定がある場合は配線図通りに配線することでメーカーの推奨するボビンを生かすことが出来ます。

ピックアップはボビンの特性によってサウンドの傾向が変わります。
インピーダンスが低いと出力抑えめで高音域特性が良いサウンドとなる傾向が強く、インピーダンスが高いとその逆の傾向になると考えられる為、コイルの抵抗値から出力するコイルを選ぶのも一つの選択肢となります。

タップするボビンの位置によるサウンド特性の違い

タップするコイルの選びかた

①は外側のコイルをキャンセルする配線です。メーカーの配線図ではこのパターンのものを多く見かけます。

②は内側のコイルをキャンセルしています。
ピックアップはブリッジに寄るほどタイトさが増したサウンドとなり、指板側に寄るほど温かみのあるサウンドとなる傾向にあるため、フロントとリアのタップサウンドにメリハリをつけたい場合は②のタップ配線を組みます。

③④は同じ規格のピックアップを使用した場合にフロントとリアのミックス時にノイズを出しにくいタップ配置です。
ハムバッキングピックアップは磁界方向の違うボビン同士を組み合わせてノイズを相殺する仕組みとなています。フロントとリアの並列出力時においても磁界方向の違うもの同士を組み合わせることでノイズ対策が有効となります。

まとめ

ハムバッカ―のギターでシングルサウンドの出力も可能とするコイルタップは標準装備で販売されるモデルも多数存在します。サウンドバリエーションが増えることで表現の幅も広くなります。

コイルタップの配線コントロール方法は、このページで紹介したもの以外にも多くのバリエーションがあります。どのようなコントロールにしたいのか、どのようなパーツを使用するかで組み方が変わってきます。ハムバッキングピックアップは配線の組み方次第で様々なサウンド出力が可能ですが、あまり複雑なコントロールにすると操作性が悪くなるので注意しましょう。

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