Frontisland×黒幕

ギター紹介

Frontisland×黒幕 BODY

黒幕ギター工房さんとコラボという形で共同制作を行なったギターです。
鮮やかなボディの塗装をはじめ、パーツの選定は黒幕さんが行い、ネックの制作と組込みは私が担当させていただきました。

Frontisland×黒幕 トレモロとエスカッション

ピックアップエスカッションはオリジナルのクリアタイプです。
リアピックアップはフロントがアリアプロのピックアップで、リアがビルローレンスのL500です。

黒幕さんのこだわりとして、フロイドのスタッドは木ネジタイプでの組込み指定でした。
スタッド受けのアンカーを使わずに直接ボディにねじ込んでいるこちらのタイプの方が音響的に好みなんだそうです。現在はスタッドとアンカーの組み合わせのものが主流ですが、アンカーレスの木ネジタイプは現在も入手が可能です。

Frontisland×黒幕 ヘッド

ヘッドのロゴは黒幕さんのロゴと私のロゴを重ねています。Frontislandの文字は角度によって見えやすかったり見えなかったりします。狙ったものではなく、たまたまこうなってしまったのですが、これはこれで2つの表情を持っていてコラボらしくて良い感じとなりました。

Frontisland×黒幕 ヘッド裏

ネックはヘッド以外は黒幕さん好みの研ぎの艶消し仕上げとなっています。
艶消し仕上げにも色々あります。吹きつけによる艶消しは比較的サラサラとした触感が特徴的ですが、研ぎ上げによるこちらの仕上げはしっとりとした肌触りのものとなっています。
Frontisland×黒幕 ボディバック

制作について

黒幕BODY&パーツ 「組んでほしいギターがある!」ということで、友人の黒幕さんからこちらのボディとパーツを預かりました。
黒幕さんお得意のラメのファイアーパターン塗装のこちらのボディは過去に塗装した試作品の一つだそうです。

いつもの調子で「お任せで組んでくれていいから」という感じで渡されましたが、肝心のネックがありません(爆)
「ネックは何かを流用しても良いし作ってくれても良いよ!任せる(笑)」というオーダーです(汗)

黒幕さんは『黒幕Guitarちゃんねる』というYouTubeチャンネルでギター制作活動もしています。せっかく特殊なボディ塗装なので、今回はYouTubeのコラボ企画という形でLEDポジションマークのネックをボディに合わせて作成することにしました。

ネックの制作

黒幕NECK&BODY(塗装前)

元々付いていたネックがあればそちらの寸法を追ってネックを作成することが出来ますが、今回はネックが無い状態なので少し厄介です。
今回のネックは、普段私が制作しているネックを基にボディに合わせて寸法の帳尻を合わせたものを制作しました。

黒幕ネックジョイント形状

ネックのヒール形状はこのような感じにしてみました。

違うモデルのボディとネックを組み合わせたり流用する場合、ジョイント部のネックとボディ形状の繋がり部分が不自然になる場合があります。
流用の方が制作が簡単な気もしますが、各部寸法や形状の帳尻合わせのことを考えると、きちんと仕立てる場合においてはどちらも大変な手間が掛かると思います。

ネックの塗装

ヘッドロゴ仕上がり

黒幕さんのロゴはバーコードスタイルのロゴなので、『バーコードの部分にロゴを重ねれば良い感じになるんじゃないだろうか?』という話になり、ヘッドのロゴは2人のロゴを重ねて入れてみることになりました。

ヘッドロゴを入れる様子はYouTubeのPART-1で公開しています。

ヘットトップは黒の艶有りで、ネックの裏面は着色無しの艶消し仕様となりました。
艶消しの施工は吹きつけによるものではなく、研ぎ上げによる施工を行いました。サラサラとした肌触りが特徴的な吹きつけによる艶消しに対し、研ぎあげた艶消しはしっとりとした触感です。黒幕さんの話では、研ぎによる艶消し施工はKillerのギター等で施工されているそうで、肌触りはしっとりとしていて使い込むことで独特の艶感が出て、その風合いを楽しむことが出来るそうです。

コントロールと配線

コントロールについては「オススメで面白いやつ」という要望をいただいたので、ちょっと変わったコントロールを組むことにしました。

Frontisland×黒幕-01コントロールの仕様

5wayのスーパースイッチとスイッチ付ポットの組み合わせで10パターンの出力パターンの切り替えを行うコントロールです。
ピックアップ2つだけで多彩なサウンドの出力が可能なので、各レバーポジションでの微妙な音の違いを楽しむことが出来ます。

配線図

Frontisland 黒幕さんコラボ LEDラメギター配線図

配線図はこんな感じです。
5WAYのスイッチにも種類があり、一般的なストラトタイプに使用される5wayスイッチでは、このコントロールを組むことは出来ません。このコントロールを組む場合にはスーパースイッチと呼ばれるタイプの5wayレバースイッチを使用します。
スーパースイッチは2段構造となっていますが、配線図では平面にまとめて表記しています。

セレクターのモード②ではコイルタップを中心とした出力パターンが出力されます。

レバー位置が←・↑・→では一般的なコイルタップではなく、抵抗を組み合わせたコイルタップ配線となります。
抵抗値が0の場合は一般的なコイルタップと同じ状態ですが、タップ線とGND間に抵抗を咬ませることでコイルタップともハムバッカーとも違ったサウンドが出力されます。
抵抗値を小さくすれば回路的にはコイルタップに近い状態となり、抵抗値を大きくすることで出力されるサウンドもハムバッカー寄りの太いサウンドになります。
抵抗値の選定はギター本体の仕様や、どのようなサウンドを狙うかによって変わります。今回は3.3kΩの抵抗で組んでみました。

2ハムのレバースイッチコントロールは3wayで組むのが定番かもしれません。シンプルな操作性でメンテナンス性の良い3wayで組むか、サウンドバリエーションが豊富な5wayで組むか、ギターの所有者の嗜好で選択が別れるところだと思います。
今回の配線についてはYouTubeでまとめていますので、。詳しく見たい方はそちらを見てみてください。

ピックアップリード線の交換

Frontisland×黒幕 ピックアップリード線交換前

今回のギター用に黒幕さんが用意してくれた写真のピックアップは出力線が1芯のシールド線タイプのものでした。
ハムバッキングピックアップのコイルタップやパラレル切り替えのコントロールを行いたい場合、1芯のシールド線では配線を組むことが出来ません。このタイプのピックアップでコイルタップやパラレルコントロールの配線を組みたい場合には、リード線を4芯シールド線に交換します。
リード線交換にはリスクがあります。ピックアップのコイルが断線した場合、ピックアップが修復不可能となることもありますので注意が必要です。

Frontisland×黒幕 ピックアップ分解中1

まずは、ピックアップに巻かれたアセテートテープを剥がします。このピックアップの場合はテープを剥がしただけでコイルの出力線とピックアップ出力線の接続口にアクセス出来ました。
各コイルの出力線と、それに繋がった黄色のピックアップ出力線を切り離します。

Frontisland×黒幕 ピックアップリード線交換2

ピックアップリード線の切り離しが完了したら、それぞれのコイルの出力線に4芯のシールド線を繋いでいきます。
余裕がある場合には、接続前にコイルの位相の確認を行い、組み合わせるピックアップと4芯線の色の配置を同じにしてあげることで、後の配線が楽になります。

Frontisland×黒幕 4芯シールド戦

ピックアップリード線の切り離しが完了したら、それぞれのコイルの出力線に4芯のシールド線を繋いでいきます。
裸線はシールド線ですので、ピックアップのベースプレートにハンダ付けします。

Frontialand×黒幕 ピックアップリード線交換完了

線の接続箇所はきちんと絶縁を行います。最後にアセテートテープを巻き直せば作業完了です。

組み込み・セットアップ

Frontisland×黒幕 組込み1

ネックを接続し、ネックセンターの確認を行ない、問題がなければピックアップエスカッションを弦通りに合わせて固定します。
弦ゲージは09-42を張り、レギュラーチューニングでセットアップを行いました。

今回のペグはロック式です。ペグがロック式の場合、弦を張ってすぐに弦をカットしません。万が一調整で弦を外す必要が出た場合に弦を張り直すことが困難になるからです。調整と検品が終わり、問題のないことを確認した後に余分な弦をカットします。

LED用の電池ですが、今回は電池ボックスを設置せずにコントロールキャビティ内の空いたスペースに電池を収納することにしました。

なるべく簡単な電池脱着方法にしたかったので、今回は磁石で電池を固定してみました。

まとめ

Frontisland×黒幕001

見た目も機能もカスタムギターらしいギターになったと思います。

ギターは完成しましたが黒幕さんはネックだけではなくボディも光らせたいということで、ピックアップキャビティ内やブリッジリセス内を光らせる手段を色々模索しているようで、このギターはまだまだ進化の途中のようです。

黒幕ギターチャンネルさんのチャンネルにて、こちらのギターの演奏動画が見られます。

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