Frontisland No.10ヘッド

このページではエレキギターのペグの種類や特徴について記載しています。

ギターの“ペグ”とは

ペグの各部名称

ギターのペグ(Tuner)とは、弦をギターに固定しつつ張り具合を調整するパーツです。弦の張りを強くすることで音程が上がり、緩めることで音程は下がります。
ペグはチューニング精度や音質に影響するギターにとって重要なパーツです。場合によっては演奏性にまで影響を及ぼします。

ギヤ比

オープンタイプペグ

ペグはギヤを用いた構造となっています。このギヤの比率の違いがペグの特性の違いの一つとなります。
例えば、ギヤ比が1:15のペグの場合、ペグポストを1回転させるのにペグボタン(ノブ)は15回転させる必要があります。対して1:21の場合には21回転です。このことから、ペグボタンの回転に対してペグポストの回転が少ないギヤ比の大きなペグほどシビアなチューニングがしやすいと言えます。しかし、ギヤ比が大きいということは弦を巻くのにいつもより多くペグボタンを回さないといけないということにもなります。

ギヤ比に関しては使い勝手の問題で好みには個人差があり、どれが正解というのは無いと思います。
個人的にはフロイドローズのようなロック式でファインチューナーの付いたギターに関しては低いギヤ比の方が使い勝手が良いという印象があります。

ペグの種類

ここからは大まかに分類されるペグの種類について記載します。

クルーソンタイプ

クルーソンタイプ
(連結設置)

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クルーソンタイプ
(個別設置)

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このタイプはクルーソン社が開発したことから“クルーソンタイプ”と呼ばれるようになったペグです。
本体はプレス形成構造で、ギアカバー等はカシメ止めにて固定されています。

ギターへの取付はペグポストを支えるペグブッシュをヘッドトップ側から圧入し、ペグ本体はヘッド裏からネジ止めして固定する構造です。

写真左はストラトタイプのギター等、ヘットの片側に連結させて設置するタイプのものです。連結する部分は1本のビスで共締めとなります。写真右側はレスポールタイプ等、3×3設置の場合に使用されます。それぞれベースプレートの形状が異なります。

連結設置タイプはペグの設置間隔をペグの規格に合わせて設計する必要があります。多くのギターメーカーが採用するGOTOH製ペグのSDシリーズの連結タイプのペグポスト間のピッチ寸法は23.8ミリです。

片側連結タイプのペグセットは右利き用と左利き用(リバースヘッド用)とがあります。GOTOHの場合、一般的な右利き用のストラトに対応したものは型番コードに“L”の表記があり、左利きのギターやリバースヘッドに対応したものは型番コードに“R”と表記されます。ペグを交換したい場合には右左どちらのセットなのかチェックしましょう。

ロトマチックタイプ

GOTOH
SG301-20(3×3)

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ロトマチックタイプのペグはダイカスト(鋳造)による形成です。ペグポストの軸受部分からペグボタンのシャフト受け部分まで一体形成となっており、全体の剛性強度と重量があります。

ペグは本体とペグナットでヘッドを挟み込むように固定します。ピンを用いて本体の回り止めとするものやビス止めをするものなど様々な仕様のものがあります。メーカーやモデルによってビス止めの位置が変わりますので交換の際には注意が必要です。

ロトマチックタイプはペグボタンの回転トルクの調整が可能です。ペグボタンを固定するネジの締め具合でチューニング時のペグの操作感(軽さ)が変わります。

こちらも片連タイプは右用と左用(リバースヘッド用)とがあります。

ペグ一覧

ペグによってビス止め位置(本体の回り止めの位置)が異なります。ポン付け(本体加工無し)で交換したい場合には同じ穴位置のものから選ぶのが無難ですが、各シリーズはギヤ比が違うので操作感に重点を置いてペグを選ぶ場合には、ビス穴の開け直し等の作業が必要となります。

ペグの中には本体の回り止めにビスではなくスタッドを用いたタイプのものもあります。(写真右側)

クルーソンタイプとロトマチックタイプの互換性

ブッシュ式のクルーソンタイプとナット式のロトマチックのペグはペグ本体の取付穴の規格が違うのでポン付けでの交換は出来ません。

クルーソンからロトマチックへの交換

クルーソンタイプのものからロトマチックタイプのペグへの交換するためには取付穴の拡大加工等が必要となります。
拡大加工はハンドドリルではなくボール版で行うのが安心です。リーマーを使うと上手くいく場合もあります。

ロトマチックからクルーソンへの交換

ペグの質量を軽くして音の変化を狙う場合やロトマチックに付け替えたものをクルーソンに戻す場合には取付穴を埋めて小さく修正する必要があります。又は、ロトマチック穴サイズに対応したコンバーションブッシュを使用することで対応させることが出来ます。コンバーションブッシュにはインチ規格とミリ規格のものがあります。

ロック式ペグ

ロック式ペグ

ロック式ペグのメリット

ペグポスト部分で弦を固定する機構を備えたペグを“ロック式ペグ”と呼びます。
ロック式のペグは従来のペグとは違ってペグポストに弦を何周も巻き付ける必要がありません。ペグポストに巻いた部分の弦の馴染みや伸びに弦のテンションが左右されない他、トレモロアーム使用等で弦のテンションが緩んだ際にペグポストに巻いた部分の弦が巻き戻るということが起きない為、チューニングの安定性が高いという大きなメリットを持っています。弦のロック方式にもよりますが、弦交換も比較的早く簡単に行えるというメリットがあります。

ロック式ペグのデメリット

従来のペグのように弦を何周も巻かない為、巻き量を増やしてナットへの弦の角度を稼いでテンションをコントロールするということは出来ません。出来ないこともなさそうですが、巻き量を増やすとロック式のメリットが減ってしまいます。
ポストへの巻き量が少ない分、弦の張力が1点に集中して弦にストレスがかかりやすくなります。安価なペグでは弦切れや弦抜けのトラブルが起きやすい傾向にあります。

ものによってはペグポスト内が中空構造であったりと一般的なペグとは構造が異なります。質量や構造の違いは良くも悪くもサウンドに影響します。

ダイヤルロックタイプ

GOTOH
SG381-MGT-07L

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GOTOH
SD91-MGT-05M-L
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ペグ本体のダイヤルを指で締めることで弦をロックする機構のロックペグです。扱いが楽で弦交換が楽です。

GOTOHの通常モデルの場合、ヘッド裏面からペグポスト弦穴までの高さが22.2㎜なのに対してダイヤルロック式のMG-TシリーズはL3+R3の場合の標準セットが20㎜、6連配列の標準セットが1〜3弦18.5㎜、4〜6弦20㎜となっており、ナットに対するテンションを考慮した設計となっています。
GOTOH製は種類も豊富で取付が簡単です。

この手のペグは今や様々なメーカーのものが流通するようになりましたが、ダイヤルロック式といえばスパーゼルというイメージの方も少なくないのではないかと思います。
ピンを用いた回り止め構造のために取付には手間がかかりますが、スパーゼルの付いたギターは特有のカッコ良さがあります。

スパーゼル分解

スパーゼルのトリムロックペグは分解可能でペグ方向を左右で組み替えることが出来ます。
片側6連のセットをL3×R3に組み替えることも出来ますし、5×1等の変則的な配置にも1セットで対応します。

分解・組み立てはペグボタンのネジ1本を外すだけの簡単な作業で行うことができます。

マグナムロック

GOTOH
SG381-MG-07-L


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GOTOH
SD91-MG-05M-L


サウンドハウス

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弦の張力を利用して弦をロックする機構[Magnum Lock]を備えたペグです。
弦を張る手順は以下の通りです。

①弦が通る位置までペグポストのキャップを緩めて弦穴を開き、弦穴に弦を通します。
②ペグボタンを回してペグポスト内のシャフトで弦をロックさせます。このとき、弦がきちんとロックされるまでシャフト自体は回転しません。
③弦がロックされるとシャフトが回転するようになり、弦の張力のコントロールが可能となります。

場合によっては弦がロックされるまでひたすらペグを回す必要があるため、ストリングワインダーとの相性は抜群です。

弦を外す際には弦を緩め、ペグポスト上部をマイナスドライバー(又はコイン)を用いてロックを緩めることで取り外すことが出来ます。

メーカー純正のロックペグ

FENDER LOCKING TUNERS

Fender
LOCKING TUNERS

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フェンダー純正のロックペグです。AMERICAN STANDARDやAMERICAN PROFESSIONALシリーズの同形状のペグに互換性のあるロックペグです。同じ規格のペグであればポン付けでの交換が可能です。
別規格のペグからこちらのペグへ交換する場合には回り止めピン2本の下穴の位置出し及び穴開け等の作業が必要となります。取付は簡単ではない為、DIYでの取付作業はお勧めしません。

PRS SE Locking Tuners

PRS
SE Locking Tuner
(R×1)

PRSSE Locking Tuner(R×1)サウンドハウス
PRS
SE Locking Tuner
(L×1)

PRSSE Locking Tuner(L×1)サウンドハウス

PRS純正のロック式ペグです。ペグポスト上部のツマミを回すことで弦のロック&リリースを行います。
SEシリーズをはじめ、Standard24やCustom24等と互換性のあるペグですが、クルーソンタイプのペグを搭載した一部のモデル(SE McCARTY 594やSE Silver Sky 等)にはポン付け出来ませんので注意が必要です。

ポスト高調整機能付ペグ(H.A.P)

Frontisland BrianR34Guitar37

GOTOHのペグには無段階でペグの高さが調整できるH.A.P[Height Adjustable Post]という機構を備えたモデルがあります。
各弦のペグポストを任意の高さに設定することでナットにかかる弦のプレッシャーをコントロールし、奏者に合わせた弦のタッチテンションにすることが可能です。特にヘッドアングルのないストレートタイプのネックに有効です。
場合によってはテンションピンの設置も省略できます。トレモロアーム使用時にチューニングが狂いやすい場合の原因がテンションピンだった場合には、H.A.Pのペグに変えてテンションピンそのものを無くしてしまうことで原因を取り除くという手段もあります。

Frontisland BrianR34Guitar SPL10

ペグポストの高さの調整には6角レンチを使用します。
本体の穴に6角レンチを入れてロックを外すとペグポストがフリーになります。フリーになったペグポストを手で摘んでクルクル回すと、回す方向で高くなったり低くなったりと高さが変わります。設定したい高さになったら六角レンチでロックします。

ペグの高さ調整+弦のロック(H.A.P.M)

GOTOH
SG381 HAPM 07 L6

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品番表記に記載されたHAPMはそれぞれHAP(Height Adjustable Post)とM(Magnum Lock)を指したもので、ロック式でありながらペグポストの高さ調整も行えるマルチな仕様のペグです。どちらの機能にもメリットがある為、上手く使いこなすことでチューニングが安定しやすいギターに仕上げることが可能です。

Dチューンシステム

ドロップチューニング用の可変チューニング機能を備えたペグです。

HIP SHOTのDチューナーはレバーを下げるだけのワンアクションで6弦のチューニングをEからDへダウンさせます。
レバーを下げない通常の状態で一度チューニングを合わせた後、レバーを下げて弦のテンションが緩み音程が下がった状態のチューニングを写真下部の調整ダイヤルを用いて行います。

こちらはスパーゼルのDチューンペグです。ロック機能も備えつつEとドロップDとのクイックなチューニングの切替が可能となっています。
元々スパーゼルが付いているギターにはドロップDの機構が干渉する場合を除いてポン付けで交換取付が可能です。

ナットとの相性が悪い場合には操作時に弦がスムーズに動かずに狙ったチューニングに定まりません。Dチューン機構を持ったペグを取付ける際にはナット弦溝も合わせた調整がお勧めです。

ペグのトラブル

ここからはペグのトラブルについて紹介します。

ペグナットの緩み・ブッシュ抜け

写真赤丸の部分のナットは緩みやすく、弦交換等のタイミングで定期的に締付け具合を確認した方が良い部分です。
緩みがひどくなるとペグ自体が動いてしまう為、チューニングが不安定になる要因となります。

青丸の部分は緩すぎるとチューニングが狂いやすいので、緩い場合には調整しやすい程度に締めてトルクを調整します。

クルーソンの圧入するタイプのペグブッシュも抜けてくる場合があります。緩くなってペグポストを支えられない状態ではペグ本体の負担が大きい為、早めの処置が必要です。

ペグ本体の破損

破損したペグ

ストラップが外れてギターを落としてしまったり立てかけておいたギターを倒してしまった際、ペグ本体へ強い衝撃が加わると物理的に破損します。
こうなってしまったら交換するしかありません。

本体の回り止めがネジ止めではなくピンタイプのペグの場合、ピンが折れてしまうケースもあります。転倒には気をつけましょう。

まとめ

Frontisland-No,11-HEAD

ペグの交換は同じ規格のものであればドライバー等の道具で比較的簡単に交換することが出来ますが、規格の違うものへの交換はギター本体への加工が必要になるので作業は簡単ではありません。

ペグの交換は操作感やチューニングの安定感に加え、構造や重量の変化による音の変化を楽しむことが出来ます。様々な機能を持ったペグがありますが、個人的には弦のタッチテンションが調整出来るGOTOHのH.A.Pが好きです。
ペグは機能面で選ぶのも良いですが、形状や色のバリエーションが豊富なので見た目のカスタマイズという楽しみ方も出来ます。

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