ピックアップのポールピース

このページではエレキギターのサウンドの要となるピックアップのポールピースについて、ピックアップの交換の際の選択の決め手になるポイントをまとめています。

ポールピースの高さについて

写真はシングルタイプのマグネティックピックアップです。
真ん中に6つ並んでいる銀色の丸い突起物がポールピースです。
ポールピースにはパターンが幾つかあり、それに伴ったサウンドの傾向があります。

まずはポールピースの高さです。
ポールピースの高さは1~6弦まで高さが均一な物と、そうでないものに分かれます。
1弦~6弦までポールピースの高さが均一なものは“フラットタイプ”。
1弦~6弦まで山なりな高さの並びになっているものを“スタッガードタイプ”と呼ばれています。

指板面のRが184mm(7-1/2″)のように丸みを帯びている場合には1、6弦に対して3,4弦がピックアップから大きく遠ざかる為、ポールピースの高さを変えることでそのバランスを取っているものがスタッガードタイプです。

セイモアダンカン
SSL-1 VINTAGE STAGGERED
セイモアダンカン SSL-1 VINTAGE STAGGERED
セイモアダンカン
SSL-2 VINTAGE FLAT
セイモアダンカン SSL-2 VINTAGE FLAT

(サウンドハウスで見る)

参考にダンカンのピックアップの画像を見てみましょう。(画像クリックでサウンドハウスWebサイトにて製品の詳細が確認できます)
左のSSL-1がスタッガードタイプです。良く見ると3,4弦のポールピースが高くなっているのが分かると思います。
対して右側のSSL-2はポールピースの高さはフラットです。

もう一つ注目して頂きたいところが2弦のポールピースの高さです。
スタッガードタイプのピックアップ(ヴィンテージ系)は2弦のポールピースが低く設定されています。これにはギターの歴史が関係しています。現代の弦の主流は1~3弦がプレーン弦。4~6弦が巻き弦となっていますが、昔は3~6弦が巻き弦でした。3弦の芯線が細かった為、各弦のバランスを取る為にこのような高さ設定になっていたとされています。当時と同じポールピースの高さの並びがヴィンテージスタイルのギターのピックアップ特性であるため、現代も2弦のポールピースが低いスタイルが引き継がれています。

ビンテージスタッガードスタイルでないと表現出来ないトーンがあるというポイントが重要なのだと捉えていますが、現代においてはギターの個体差や人の感覚によって2弦の音量が小さく感じられる場合があるかもしれません。しかしそれもヴィンテージスタッガードの良さなのです。

モダンなピックアップでは2弦のポールピースが現代の弦の仕様に合わせて製作されている為、スタッガードでも2弦の出力だけ低いというトラブルはありません。

ポールピースの高さ調整

ポールピースの高さは調整が可能なものもあります。

ディマジオ
DP111 “SDS1”

ディマジオ DP111 “SDS1”
セイモアダンカン
SH-4 “JB”

セイモアダンカン SH-4 “JB” Black

(サウンドハウスで見る)

写真左のディマジオDP111のようなタイプはポールピースの高さを六角レンチで調整することが可能です。

ハムバッカータイプはシングルピックアップが2つ合体した造りになっています。
ポールピースの高さ調整が出来るのは両側可能なものもあれば片側のみのものもあります。
ハムバッキングピックアップについては写真右側ダンカンJBのようにポールピースの調整が片側のみのものが多く存在します。

ピックアップを購入した状態からポールピースの高さの調整を必ずしも行わなければならないかというとそうではありません。工場出荷時の状態のままでOKです。
サウンドにこだわる場合や音量のバランスが気になる場合には高さの調整が有効です。
ポールピースの高さを極端に変えることによりサウンドキャラクターは変化します。

オーソドックスなギターのピックアップは1弦から6弦にかけてボビンが直線状となっていますが、PRSのピックアップはボビン上面が弦に対してバランスよくアーチを描いています。このようにポールピースの上げ下げではなくピックアップそのもので各弦との高さのバランスをとっているピックアップもあります。

ポールピースの間隔

ブリッジポジションのハムバッキングピックアップは弦間ピッチに合わせてポールピースの間隔が複数設定されている場合がありますので最適なピッチのものを選択することができます。

セイモアダンカン
SH-4 “JB”

セイモアダンカン SH-4 “JB” Black
セイモアダンカン
TB-4 “JB” Trembucker

セイモアダンカン
TB-4 “JB” Trembucker

(サウンドハウスで見る)

ダンカンの場合、ポールピース間のピッチの違いで品番が変わります。

同じJBでも“SH-4”と“TB-4”とがあり、レスポール系ギターのブリッジ(チューンオーマチックタイプ)に多い弦間ピッチ10.4㎜向けがSH-4となります。

TB-4はストラト系ギターのシンクロトレモロやフロイドタイプの10.8~11.3㎜のタイプに合うポールピースピッチとなります。
ピッチの広いTBはトレムバッカーと呼ばれています。
ポールピースのピッチの広いモデルに関しては品番がTBから始まっていて、弦間ピッチの広いタイプのギターのブリッジポジションにはトレムバッカーを選択するのが一般的です。

SUHR(サー) Thornbucker
Bridge 50mm RawNickel

SUHR Thornbucker Bridge 50mm RawNickel
SUHR(サー) Thornbucker
Bridge 53mm RawNickel
 SUHR ( サー ) / Thornbucker Bridge 53mm Raw Nickel

(サウンドハウスで見る)

SUHRやBare Knuckle Pickupsでは50㎜又は53㎜と数値にて表記があるので見分けが可能です。
この数値は1弦と6弦のポールピースのセンター間の距離となっています。

ディマジオ DP155
TONE ZONE

ディマジオ DP155 BLACK TONE ZONE
ディマジオ DP155
F-SPACE TONE ZONE

 DIMARZIO ( ディマジオ ) / DP155 F-SPACE BLACK TONE ZONE

(サウンドハウスで見る)

ディマジオ等についてはポールピースピッチの広いモデルには“F-SPACE”の表記があります。
上の画像はディマジオの名機“TONE ZONE”です。

メーカー問わず、全てのモデルにポールピース間隔の広いもの狭い物の設定があるわけではない為、載せたいピックアップがギターの弦間に対してピッチが合わないという場合は多々あるかと思います。
そのピックアップでなければ出せないサウンドを必要とするのであればポールピースと弦とのピッチが合わなくともそのピックアップを載せるという選択は全然有りです。

これは極端な例ですが、ダンカンのインベーダーはポールピースが広いタイプ(トレムバッカー)の設定が無く、フロイドやシンクロブリッジを載せたギターでリアインベーダーのポールピースと弦のピッチが合っていないギターを見かけることがありますが、ポールピースがデカいし出音のバランスが崩れているわけではないので問題無しってことで良いと思います。

ポールピースの形状

ポールピースにはスタンダードなドットタイプやバータイプ等色々な形状があります。
ドットタイプでも大きさ等の種類があります。

バータイプ

ビルローレンス L500XL
ビルローレンス L500XL
セイモアダンカン SHR-1b “Hot Rails“
セイモアダンカン SHR-1b “Hot Rails“

(サウンドハウスで見る)

L500やホットレイルはポールピースがバータイプ(レール状)になっており、1~6弦までをカバーしているのでブリッジの弦間ピッチを気にすることなくギターに搭載することが出来ます。
高出力ピックアップに多く採用される傾向があり、シングルサイズのハムバッカーにはこのタイプが多く存在します。

その他

オープンタイプのピックアップで変わり種といえばレースのアルミトーンがあります。
ワイドレンジローノイズでおなじみのピックアップですが、そもそもコイルが無いピックアップであり、構造は企業秘密ということでポールピースと言える部分があるのか無いのかも分かりませんが、こちらのピックアップもブリッジの弦間ピッチを気にすることなくギターに搭載することが出来ます。

 LACE ( レース ) / Alumitone Single-Coil Black Anodized LACE Alumitone
(サウンドハウス)

ポールピースの大きさ

ポールピースは大きさが変わることでサウンド特性も変わってきます。

セイモアダンカン
SSL-4 Quarter-Pound Flat

セイモアダンカン
SSL-4 Quarter-Pound Flat
トムアンダーソン
H3

トムアンダーソン
H3

(サウンドハウスで見る)

ポールピースが大きいピックアップの事を“クォーターパウンド”と呼びます。
ポールピースが大きいことによるメリットは、ポールピースが大きい分、弦振動をとらえる磁界が広いことにあります。

H-S-Hのピックアップレイアウトのにおいて、ハムバッカーが出力高めの場合にはセンターのシングルピックアップとの出力バランスに著しく差が出る場合があります。
パワーのあるシングルコイルとしてポールピースの大きなクォーターパウンドの選択は有効です。
ダンカンのSSL-4は一般的なストラトピックアップと比較した場合に約2倍の出力を誇るシングルピックアップとなっています。

出力の大きいパワーのあるピックアップとしての印象が強いクォーターパウンドですが、「全てのクオーターパウンド=大パワー」ということではないことを把握しておくことも必要です。

カバードタイプ

EMG 81
EMG 81
FISHMAN Fluence
FISHMAN Fluence

(サウンドハウスで見る)

カバードタイプのピックアップは内部構造はメーカーによって様々ですが、EMGやフィッシュマンのカバードタイプのピックアップはブリッジの弦間ピッチを気にすることなくギターに搭載することが出来ます。

ただし、バルトリーニのベース用ピックアップ4弦用と5弦用とでは外見は同じで寸法も同じでも5弦ベースに4弦のピックアップを載せると1弦と5弦の音が小さくなるという話を聞いたことがあります。5弦ベースには5弦用ピックアップを載せましょう。

BARTOLINI ( バルトリーニ ) / 9CBJD-L1
BARTOLINI
9CBJD-L1(4弦)
BARTOLINI ( バルトリーニ ) / 59CBJD-L1
BARTOLINI
59CBJD-L1(5弦)

(サウンドハウスで見る)

まとめ

ポールピースの高さ、間隔、形状、大きさについて紹介しました。
幾つかパターンがあり、それぞれの特徴がありますのでピックアップの載せ替えやギターの制作を検討する場合にはこちらのポイントも踏まえることで選択の決め手が見えてくると思います。

ピックアップはサウンド要素の一つにすぎませんので実際にギターに載せてみないとどのようなサウンドになるかは分かりませんが、交換することで良くも悪くもギターのキャラクターは大きく変わります。沢山のギター、ピックアップに触れて色んなサウンド体感してみましょう。

サウンドハウスでピックアップを見る)

ピックアップのサウンドチェックはメーカー公式YouTubeのデモ演奏や試奏音源CD付きの書籍が参考になります。

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