frontisland FISHMAN Fluence

初めに

コイルレス構造でアクティブ仕様というちょっと変わったピックアップでノイズが少ないのが特徴のFISHMAN FLUENCEシリーズは、1つのピックアップで多彩なサウンドバリエーションを持っており、スイッチの切り替えで様々な種類のサウンドの出力が可能です。

その機能や配線配線コントロール方法ですが、情報が少なくて調べても分かり難いと感じたのでこのページにまとめることにしました。

ピックアップのモデルやバージョンにより出力バリエーションや配線構成が異なりますが、このページを見れば大体の機能やコントロールのイメージが掴めると思います。

Voice切替コントロール

Voice切替コントロールとは、ピックアップのサウンドキャラクターを切り替えるコントロールのことです。

FISHMAN-FLUENCE-ピンの解説

イラストのピン配置の場合、Voiceの切り替えは⑥の「Voice 2」の端子を用いて行います。
⑥のVoice2端子をどこにも接続しない状態ではサウンドモードはVoice1となります。
Voice2の端子をGNDに接地すると出力されるサウンドはVoice2へと切り替わります。スイッチにて切替を行いたい場合には、⑥に接続したリード線をGNDに接地させるかさせないかをスイッチで切り替えるコントロール配線を組みます。
Voice切替を行わなず、出力サウンドをVoice2に固定してしまいたい場合には⑤(GND)と⑥(Voice2)に付属のジャンパーピンをセットします。

HF-Tiltコントロール

パッシブピックアップのギターで長いシールドケーブルを使用した時に生じるサウンド変化を再現するHF-Tilt(High Frequency Tilt)の機能です。モデルによっては『HFT』と記されています。

パッシブピックアップを搭載したギターとアンプをシールドケーブルで繋ぐ場合、シールドが長いと高音域が抑えられたサウンドになる傾向にありますが、構造の違いからアクティブピックアップのギターではその現象が起きにくくなります。高音域が抑えられる現象は高音域の劣化とも捉えられる現象であり、長いシールドを使用してもサウンドに影響が及ばない点はアクティブピックアップのメリットの一つです。しかし、パッシブに慣れている人からしてみると、高音域が抑えられた状態こそが通常の状態です。
HF-Tiltの機能を使うことでアクティブピックアップでありながらパッシブピックアップのギターで長いシールドケーブルを使用した時に生じる高音域が抑えられたサウンドテイストを楽しむことが出来ます。

FISHMAN-FLUENCE-ピンの解説

イラストのような端子配置の場合、HF-TiltのON-OFFは④の「HF tilt」と記載された端子を用いて行います。
HF-Tilt端子をどこにも接続しない状態は通常のサウンドモードです。HF-Tilt端子をGNDに接地させることでHF-TiltモードがONになります。

HF-TiltのON-OFFのコントロールを持たせない場合において、ギターから出力させるサウンドをHF-TiltモードONに固定しておきたい場合には付属のジャンパーピンを③(GND)と④(HF-Tilt)間にセットします。

Gainコントロール

GainコントロールはGain端子をGNDに接続することでローゲインモードに切り替える機能です。

FISHMAN-FLUENCE-ピンの解説

イラストのような端子配置の場合、Gainのモード切替は②の「V1 Gain」と記された端子を用いて行います。ローゲイン化される対象はVoice1です。
V1-Gain端子をどこにも接続しない状態では通常のサウンドモードとなります。V1-Gain端子をGNDに接地させることでVoice1がローゲインモードになります。

ギターから出力させるVoice1のサウンドをモードをローゲインに固定しておきたい場合には付属のジャンパーピンを①(GND)と②(V1 Gain)間にセットします。

コイルタップ

FISHMAN-FLUENCE-ピンの解説

ピックアップのモデルによってタップコントロールの組み方が違います。ここでは上記イラストのように10番(H)と11番(CT)のコイルタップ 用パッドを備えたモデルでのタップ配線方法について記載します。
このタイプは1〜9番まではコネクター接続ですが、タップの配線に関しては直接ハンダでリード線を接続します。
Hはホットを意味し、CTはコイルタップ(タップ線)を意味しています。HとCTのパッドに何も接続しない場合にはピックアップはハムバッカーとして機能します。

ハムバッカータップ線の図

上の図はパッシブピックアップに置き換えた場合のリード線状況です。
フィッシュマンのピックアップはEMGとは違い、パッシブと同じ感覚でタップ配線を組むことが出来ます。
CTをGNDに接続するとマイナスポールピース側のコイルがキャンセルされます。




タップ配線の方法

FISHMAN-タップパターン解説

Aのスイッチ接続の場合

イラストの右上のスイッチ接続の場合、レバー下方向の状態ではCTとGNDは離れた状態です。HもCTもどこにも接続されないオープン状態なのでピックアップはハムバッカーとして機能し、2つのコイルが機能する①の状態となります。

レバーを上方向に切り替えた場合、CT(タップ線)がGNDと接続されるのでキャンセルするコイルがGND側でショートして音が出なくなります。
この方法でキャンセルされるコイルはフロント用ピックアップの場合はネック側、ブリッジ用ピックアップの場合はブリッジ側となり、内側のコイルのみ機能するイラスト③の状態となります。

Bのスイッチ接続の場合

レバー下方向の状態ではCTとHは離れた状態です。HもCTもどこにも接続されないオープン状態なのでピックアップはハムバッカーとして機能します。

レバーを上方向に切り替えた場合、CT(タップ線)がH(ホット)と接続されるのでキャンセルするコイルがホット側でショートして音が出なくなります。
この場合、Aの時と反対のコイルがショートして音が出なくなる状態となる為、キャンセルされるコイルはフロント用ピックアップの場合はブリッジ側、ブリッジ用ピックアップはネック側となり、外側のコイルのみ機能するイラスト③の状態となります。

Cのスイッチ接続の場合

AとBのスイッチ接続を組み合わせたコントロールです。ON-OFF-ONのスイッチなので、レバー位置が中央の状態ではCTはHにもGNDにも接続されません。HもGNDもオープンな状態なので、ピックアップはハムバッカーとして機能します。

レバー上方向ではBのスイッチ接続と同じ状態となり、レバー下方向ではAスイッチと同じになる為、キャンセルするコイルを選択出来るタップコントロールとなります。

こちらのモデルの場合、Voice3がコイルタップの設定でシングルコイルサウンドが出力されます。

②のVoice3端子がGNDに接地することでシングルコイルサウンドに切替わります。
コイルタップ時に有効となるコイルの選択は11〜13のハンダパットを使用して選択します。イラストでは12と13がハンダで繋げられた状態となっており、この場合にはVoice3時にネック側のコイルが有効となりブリッジ側のコイルがキャンセルされます。コイルタップ時にブリッジ側のコイルを生かしてネック側のコイルをキャンセルしたい場合には12・13間のハンダを除去し、11と12のパットをハンダで繋ぎます。

②(Voice3)と④(Voice2)が両方GNDに接地している場合にはVoice3が優先されます。

⑩のSCO(South Coil Out)はピックアップ配列がHSHやSSHの場合において使用するもので、ハムバッキングピックアップのコイルタップとシングルピックアップの音を同時出力させるときに使用するものです。

ハムバッカーモデル

多弦モデルやアーティストモデルも充実したラインナップのFluenceハムバッカーですが、ここではその一部を紹介していきます。

Modern

 FISHMAN ( フィッシュマン ) / Fluence Modern Humbucker Alnico Black Nickel FISHMAN
Fluence Modern Humbucker Alnico
(サウンドハウス)

FISHMAN ( フィッシュマン ) / Fluence Modern Humbucker Ceramic Black Nickel FISHMAN
Fluence Modern Humbucker Ceramic
(サウンドハウス)

Modern Humbuckerにはアルニコとセラミックのラインナップがあります。
どちらをどのポジションにセットしても良いのですが、アルニコがフロントでリアがセラミックという組み合わせのパターンが多いようです。

細かなスペックやサウンドの傾向はFISHMANの日本語ウェブサイトに記載されています。詳細は下記リンクから確認出来ます。

Classic

 FISHMAN ( フィッシュマン ) / Fluence Classic Humbucker Neck Brushed Stainless FISHMAN
Fluence Classic Humbucker Neck
(サウンドハウス)

 FISHMAN ( フィッシュマン ) / Fluence Classic Humbucker Bridge Brushed Stainless FISHMAN
Fluence Classic Humbucker Bridge
(サウンドハウス)

クラシックスタイルでビンテージトーンを持ちつつ、Voice切替等の現代的機能を持ち合わせたピックアップです。

細かなスペックやサウンドの傾向はFISHMANの日本語ウェブサイトに記載されています。詳細は下記リンクから確認出来ます。

フィッシュマンFluence

ハムバッカーセットには写真のパーツが付属しています。

シングルサイズピックアップ

FISHMAN Fluence Set of 3 Single Width Pickups for Strat, WhiteFISHMAN Fluence Set of 3 Single Width Pickups for Strat, White
(サウンドハウス)

FLUENCEのシングルピックアップにはプリアンプを内蔵したものと内蔵していないものとがあります。プリアンプを内蔵していないものはプリアンプを内蔵したシングルピックアップと組み合わせて使用する仕様となっています。
ピックアップの種類やバージョンの違いでリード線の役割や配色が異なります。

FISHMAN-Single-Wire-Color-Scheme

イラストはプリアンプを内蔵したピックアップのリード線の役割を図に表したものです。
このパターンの場合、リード線は下記のような役割配置となります。

①はプリアンプの入力線です。出力したいピックアップのコイル出力線を接続します。

②はこのピックアップのコイル出力線です。このピックアップを出力させる場合に①へ接続します。

③はバッテリーのプラスを接続します。

④はGNDに接続します。

⑤はプリアンプの出力線です。③へ入力した信号がアクティブ信号として⑤から出力されます。

⑥はHF-Tilt(High Frequency Tilt)の機能です。パッシブピックアップのギターで長いシールドケーブルを使用した時に起こる高音域の出力変化を再現する機能で、⑥をGNDに接地させることで有効化となります。

⑦はVoice切替線です。GNDへ接続するとVoice1からVoice2へと切り替わります。1つのピックアップで2つのサウンドを楽しむことが出来ます。

HSH及びSSHに特化したシングルピックアップ

FISHMAN ( フィッシュマン ) / Fluence Single Width Pickup Active Black/White FISHMAN
Fluence PRF-SSS-BA1[Active]

(サウンドハウス)
 FISHMAN ( フィッシュマン ) / Fluence Single Width Pickup Passive Black/White FISHMAN
Fluence PRF-SSS-BP1[Passive]
(サウンドハウス)

HSHやSSHなど、ハムバッカーとシングルを混載することを前提としたシングルピックアップです。
リアンプ内蔵のアクティブタイプとパッシブタイプの2種類のシングルピックアップがありますが、パッシブのピックアップはアクティブのシングルピックアップとセットでなければ機能しません。なので、組み合わせとしては下記のようになります。

HSH→ハム+シングル(アクティブ)+ハム

SSH→シングル(パッシブ)+シングル(アクティブ)+ハム

配線コントロール

FISHMAN-SSA-Wire-Color-SchemeイラストはHSHやSSHのピックアップ配列に特化したプリアンプ内蔵シングルピックアップであるSSA(REV5.0)のリード線の役割設定です。
ハムバッキングピックアップと組み合わせることでポテンシャルが最大限に発揮されるようです。

①の線はバッテリーのプラスに接続します。

②はこのピックアップのパッシブ出力線です。

③はプリアンプの入力線です。このピックアップの②又は他のSSP(パッシブピックアップ)の出力線を接続します。

④はプリアンプの出力線です。③へ入力した信号がアクティブ信号として出力されます。

⑤はVoice切替線です。他のシングル(パッシブのSSP)とSSAをパラレル出力させるときに使用するもので、他のSSPとパラレル出力させる場合に⑤をGNDに接地させます。SSA単体出力時にはVoice2への切替線として使用します。

⑥はハムバッカーのタップモードとSSAをパラレルで出力させる時に使用する線です。⑥をGNDに接地させ、③にハムバッキングピックアップのSCOパットと接続することで④のプリアンプ出力線からハムバッカーのタップサウンドとSSAのサウンドが④パラレルミックスで出力されます。

⑦はシールド線です。GNDに接続します。

⑧はゲインコントロールです。SSHやHSHのピックアップレイアウトにおいて、ハムとシングルの出力バランスを調整する目的で設けられたもので、2ヶ所のハンダパットを繋げることで出力が+3dbアップします。

配線図と組込み手順

配線図はFISHMANの公式HP(英語)に掲載されています。

Fluence Wiring Diagrams(配線図一覧)

FISHMAN (https://www.fishman.com/)

組込み手順についてはYouTubeに解説動画がありましたので、そちらが参考になると思います。

3シングル組込み解説

2ハムの組込み解説

電源の供給


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アクティブのピックアップで組込みの課題となるのが電源の確保です。
パッシブピックアップのギターからFluenceのようなアクティブタイプのピックアップに載せ替える場合、9Vのバッテリーの設置が必要となります。コントロールキャビティ内に電池が収まらない場合や電池交換の利便性を求める場合にはボディを加工して電池BOXを設置する必要があります。

電池の交換がわずらわしいという場合には充電式のバッテリーパックを使うという選択肢もあります。
FISHMANの汎用タイプバッテリーのおおよそ38.1×44.3×10.9(mm)というサイズです。コントロールの裏パネルの面積に余裕がある場合にはUSBの接続口の丸い部分の大きさに穴を開けてパネルの裏から貼り付けることで収まりが良く使い勝手も良さそうです。

ストラトのようなギターの場合にはピックガード内に電池を入れるという方法もありますが、その方法では電池交換をする際に弦の取り外しが必要となるので結構面倒です。とはいえ、ボディの裏に電池ボックスの穴を開けたくないという場合にはバックパネル型のバッテリーを使うという選択肢もあります。この方法であればボディの加工は最小限で利便性も確保出来ます。

このページのまとめ

(Frontisland”08”)

FISNMANのFluenceは従来のピックアップとは規格違いな機能性を持ったピックアップということが分かりました。
コントロールも5Wayのスイッチやスイッチ付きポットを使用することで大きな加工をしなくても組込みが出来そうな感じです。

多機能な分、配線は複雑になりがちで、特にSSHやHSHでこだわりの強いコントロールを組む場合は少し苦労しそうな予感がします。

このページの内容はFISHMANのHPの配線図からその機能やコントロール方法を解読してまとめたものになります。同じモデルでも仕様変更により配線の色配や機能等の仕様に変更がありますので、記事の内容は一例として参考までにお願いします。

ピックアップ付属の配線図があれば普通に組むことが可能で、メインのサウンドが良いので十分なものに仕上がりますが、配線の組み方次第で通常のギターでは到達できない守備範囲の広い多彩なサウンドレパートリーを持った面白いギターに組み上がると思います。

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