ピエゾピックアップの組込み
ピエゾピックアップの組込みを行いました。
組み込むピエゾはグラフテックのTune-O-MaticタイプのGhostマウントブリッジです。ブリッジサドル内にピエゾの素子が内蔵されているタイプで、それぞれサドルから出力用の線が伸びています。この線を目立たないように組んでほしいというご依頼です。
元々付いていたブリッジもグラフテックの同じ型の物だと思います。通常であればスタッドはそのままでブリッジ本体を載せ替えるだけでも交換は可能なのだと思いますが、今回はスタッド位置の修正が必要でした。
ネックに対する弦通りを確認し、6弦側のスタッド位置を約1ミリ1弦側へ修正しました。
修正箇所はスタッドアンカーのツバの部分で隠れています。
コントロール
コントロールは上記イラストの内容で組んでいます。
今回のコントロールはフロントとリアのブレンダーコントロールを備えているところが特徴で、フロントとリアのピックアップを無段階でパラレル出力するコントロールです。ブレンダーノブはフロントピックアップを選択している時にはリアの出力レベル(ブレンド量)の調節ツマミとなり、リアを選択している時にはフロントの出力レベルをコントロールします。ブレンダーノブを半時計回りに回していくとブレンドする側のピックアップレベルが増加します。
元々のコントロールは1ボリューム、1トーン、ピックアップセレクター(トグルスイッチ)、キルスイッチ(トグルスイッチ)というものでした。
コントロールキャビティは広めの設計となっていて電池ボックス用のザグリも備えたギターの為、今回のボディ加工は配線穴の追加や径の変更程度で済ませることが出来ました。
今回組み込んだピエゾプリアンプはグラフテックのAcousti-Phonicプリアンプ・アドバンスド・キット(PK-0240-00)です。
グラフテックのGhostピックアップサドルと組み合わせることでエレキでアコースティックのようなサウンドの出力が可能となるものです。
スイッチの切り替えで通常のマグネットピックアップとピエゾのサウンドに加え、それぞれのミックスサウンドの出力も可能です。
2パターンのEQモードを備えており、darkモードでは通常のアコースティックサウンドが出力され、midモードではミッドレンジがブーストされたサウンドが出力されます。キット付属のスイッチ付きポットはピエゾボリュームの上げ下げでmid/darkの切替を行うよう予め配線が組まれていますが、今回はトーンの上げ下げで切替を行うよう配線を組み直しています。ピエゾボリュームはデュアルポットの上段でコントロールを行います。
ピエゾのゲインはプリアンプに備えられたトリマーで調整することが出来ます。
マグネットピックアップの出力に対してアコースティックのレベルが小さい場合には、マイナスドライバーで中央部を時計回りに回して調整します。
プリアンプの大きさは、おおよそ40×25(㎜)です。
各種配線のカプラーですが、受け側に対してサイズが大きくて入らない箇所があった為、一部カプラー形状を修正して接続を行いました。
元々ピックアップセレクターとしてトグルスイッチが付いていた場所に2軸2連のデュアルポットを取り付けています。
トグル取付穴はデュアルポットの取付軸に対して大きい為、取付軸が取付穴のセンター位置に収まるようにナットを加工したスペーサーリングでセンター位置に収まるようにしています。
今回使用したデュアルポットはセンタークリック機能付きですが、センタークリックは必要無いのでキャンセルして組み込んでいます。
ノブをそのまま取り付けると上段と下段の隙間が大きくて格好が悪い為、違和感がないようにポットの軸の長さを修正しています。
ナットの交換
全体の傷取り
↑全体的に細かな傷が入っていました。特に傷が目立ったのは6弦側ネックジョイントの部分です。
塗装表面の浅い傷であれば”バフ掛け”という作業で消すことが出来ます。
この作業は塗装表面を研磨して傷の部分を平らにする作業です。研磨をし過ぎると塗装が剥けてしまいますので注意が必要で、トップコートクリアの厚みが薄い場合にはバフによる傷消し作業は行えません。クリアの塗膜に余裕がある場合にも、やみくもに研磨を行うと色が剥けて下地の木が見えてしまいますので注意が必要です。
最後にポリッシュで拭き上げて仕上げています。
ストラップピンの交換
ストラップピンはジムダンロップのフラッシュマウント(埋込タイプ)のロック式に変更です。
埋込穴の加工や塗装の割れ止めの処理が必要となるので交換には手間が掛かりますが、取付強度が高くて見た目もスマートなのでお勧めのアイテムです。
ストラップピンのトラブルで多いのはストラップに引っ張られてストラップを固定するネジが曲がってしまうとか、場合によってはネジが緩くなる等がありますが、ストラップピンの受け側がボディに埋め込まれたこちらのタイプの場合には分引っ張られる力に耐える力が強いので、そういったトラブルは起きにくいと思います。
付属のネジをそのままねじ込むとトグルスイッチのキャビティに貫通してしまう為、ストラップピンの留めネジの長さは支障の無い範囲で短く修正して取付を行ないました。
フレットエッジの処理
ネックは状態が良く、特に問題はありませんでした。
指板とフレットのクリーニングに加え、写真では見にくいですがフレットエッジの面取りを行っています。
まとめ
エレキギターとして普通に使えてアコースティックサウンドも出すことが出来る守備範囲の広いギターに仕上がりました。言葉では上手く説明出来ませんが、アンプから出てくるサウンドはアコースティックシュミレーターとは一味違ったサウンドです。
弦はDRの9.5-44でセットアップを行いました。
ピエゾシステムやブレンダー機能等、他のギターには無いものを持ったギターというのは特別感があって魅力的です。