Fodera Imperial 5弦




弦に合わせたナット弦溝の調整

“使ってみたい弦があるけれど、ナットの弦溝と弦の太さが合わなくて使えない”という場合はナット弦溝の修正が必要となります。特に太い弦に張り替える場合は注意が必要で、ナットの弦溝に対して弦が太くてきちんとナットに弦が収まらない場合は以下の不具合が起きることがあります。

・ローフレットの弦高が高くなってしまうので演奏がしにくくなる
・ピッチ(音程)が不安定になる
・弦にテンションを掛けた際にナットが割れる

ナット割れは交換修理が必要となってしまうので避けたいところです。上記トラブルはナット弦溝の修正で回避・改善される場合が多いです。

ナットの交換

作業前の写真です。今回はブラスのナットが付いたこちらのベースのナット交換をします。

弦の種類を変えたいけどナット弦溝に張りたい弦の太さが合わないということで本来であれば弦溝の修正作業だけで良いところなのですが、サウンドの変化が欲しいのでナットの素材をローズウッドで試しに作ってみて欲しいという要望がありました。

弦やロッドカバーを外します。

ナットサイドに塗装が乗っている場合にはナット部分の塗装膜をあらかじめ切り離しておきます。

ナットの外し方は物に合わせて変わります。ハンマーで軽く叩いて外すものもあれば食い切りのような道具を使って引き抜くというか、剥がすようにして取り外すこともあります。

今回は引き抜く方法で取り外しを行いました。

ローズウッドの木片からナットを削り出していきます。
木口の方向はナットの強度面を考慮して指板面と垂直となるようにしています。
これまで様々な素材でナットを作ってきましたが、ローズウッドでナットを作るのは初めてかもしれません。

全体を形成して弦溝を切ります。
弦間ピッチは変更せず、元々ついていたナットと同じ間隔で切ります。

弦はThomastik-Infeld JF345 を使います。この弦に合わせてナットをりました。

最終的には弦を張った状態から現物合わせで仕上げます。
なるべくナットの弦溝を低くしてほしいという要望だったので、もとのナット弦溝よりは低めのセッティングになっています。

弦をフラットワウンドタイプに変えたことと、ナットの素材をローズウッドに変えたことで、サウンドはウッドベースに近い感じというか、柔らかいサウンドとなりましたが、なんか思っていたものと違うということで、後日ナットはブラスへ交換することとなりました。

フレットのメンテナンス

ギターやベースを放置しているとフレットがくすんだり、場合によってはサビてしまうことがあります。フレット表面の状態が悪いとチョーキングで引っかかる等、演奏に影響が出る場合があります。

ウエスで拭く程度では綺麗にならないくすみや錆を改善したい場合には研磨剤を使用して表面を磨く必要があります。

写真を撮り忘れましたが、今回フレット表面に発生した緑錆は研磨剤を使用してウエスで磨くことで綺麗にすることが出来ました。

研磨剤を使用する場合、指板面にマスキングテープを貼り養生をします。
マスキングテープの粘着が塗装に対して強い場合、マスキングテープを剥がすときに塗装も一緒に剥がれてしまうこともあります。粘着力の低いマスキングテープを使用するか、必要に応じてマスキングの粘着を落とす対策が必要です。

研磨後の研磨剤はきちんと拭きあげないと、演奏したときに指が黒くなる場合があります。

コントロールポットのナットの緩み

ピックアップバランサーノブの回転がスムーズではない状態でした。
ポットをボディに固定する取付ナットが緩んでいたことが原因で、ナットとノブが干渉していました。
ギターやベースは木が痩せたり、演奏の振動によりナットが緩むことがあります。1か所緩んでいた場合にはすべてのナットの締め付けを点検するのがお勧めです。

まとめ

このベースは定期的にメンテナンスをご依頼いただいているもので、本ページで紹介した時とは別の機会にフレット調整のご依頼をいただきました。
その時の作業の様子はYouTubeにまとめています。

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