ベースの紹介と作業の内容

Fender Jazz Bass

フェンダーカスタムショップ
レリック仕様のジャズベースです。
知人からの作業依頼品

【作業内容】
・ピックアップの高さ調整を出来るようにする
・導電塗料塗布(ノイズ対策)
・トラスロット調整
・フレット擦り合わせ
・弦交換 等

マウントクッションのスプリング化

ジャズベースのピックアップの高さの調整は、上下4本のネジを絞めたり緩めたりすることで行います。
締め込めばピックアップは下がります。緩めればピックアップは上がります。
しかし、ものによってはネジを緩めてもピックアップ自体が上がってこない場合があります。

ピックアップの高さ調整が出来ない原因(今回の場合)

ピックアップクッションの伸縮性が無い。

ピックアップを取り外すとザグリの中に黒いクッションが見えます。
スポンジは潰れた状態から元の形に戻らなくなっています。

このベースの場合クッションは真鍮のプレートに貼り付いています。メーカーによっては真鍮のプレートが無い物やスプリングが入っているものなど、仕様は様々です。

ピックアップ本体の大きさに対してピックアップザグリのクリアランスに余裕が無い。(ザグリが狭い)

このピッタリ入っている感じが良いという方もいますが、ピックアップ本体は簡単に抜けませんでした。ピックアップザグリのクリアランスは非常にタイトです。入れるにもキツイ感じでスムーズに上下する状態ではありません。

念の為書いておきますが、今回のようなスポンジクッションが潰れてピックアップを持ち上げられなくなってしまった状態やザグリが狭くてピックアップがスムーズに上下しない状態だからといって品質が悪い個体だというわけではありません。そういう仕様です。そうでなければ得ることが出来ないサウンドもあります。

しかし、それよりも都度細かくピックアップの高さ調整を優先したい場合にはその仕様を変更する必要があります。

ピックアップザグリクリアランス調整加工

ピックアップ本体とピックアップザグリのクリアランスを広げてピックアップが上下にスムーズに可動するとともに、1弦側と4弦側でピックアップの高さに差があったとしても必要に応じて傾くようにザグリ内部を必要な範囲で削り広げます。

ピックアップ配線逃げ加工

ピックアップから真下方向に出ているリード線がストレスのかかるかたちでザグリ底面に接触することを防ぐ為、リード線を逃がす空間を作ります。
配線穴にリード線が引っかかってピックアップが上がってこなくなってしまうことを防ぐ為、配線穴の拡大加工を行います。

ピックアップクッションをスプリングタイプへ変更

クッションマウントのピックアップ位置を上げたい場合にはクッション材を新品に交換すれば良いのですが、スポンジのクッションは時間が経過すると潰れた状態から膨らまなくなってしまう場合がほとんどなので、後々ピックアップの高さを調節しようとした際に、またピックアップが上がってこなくなる場合があります。メーカーやモデルによってはピックアップの上下可動を確実に行わせる為にスポンジクッション材ではなくスプリングを使用してピックアップをマウントしている場合があります。

今回はピックアップの高さ調整を確実に行えるようにしたいという要望だったので、スポンジクッションからスプリングをしようしたマウントに変更することとしました。今回は上の写真のようにピックアップザグリ内にスプリングの設置用の穴を開けたりの加工を行います。
アフターパーツとしてスプリング内蔵のスポンジクッションが販売されています。ボディ本体に加工を施したくない場合などにはそういうパーツを使用するのも一つの手です。ただし、ピックアップを下げたいけど下がりきらない等、そのクッションの伸縮幅が狙ったセッティングの伸縮幅と同じでない可能性があるので組込み前には確認が必要です。場合によってはピックアップザグリを全体的に深く掘り直す必要性があります。

ピックアップカバーのビス穴段付き加工

ピックアップ取付ビス穴を裏側からオーバーサイズのドリルで突いて段付きの状態にします。
この加工により、1弦側と4弦側で高さが変わるような、ピックアップが斜めにマウントされる場合にもストレス無く調整できるようになります。
※ピックアップカバーの肉厚や強度が足りない場合は加工を施すことは出来ません。

今回はノイズ対策もするということだったので、ピックアップザグリ内部に導電塗料を塗布しました。導電塗装面を介してスプリングもアースに落ちる仕様です。

導電塗料が乾いたら仮組込みを行い、ピックアップの可動範囲の確認等をします。

ピックアップ下に入っていたアース用板は撤去します。リアピックアップからのブリッジアース板には直接アース線を接続し、ピックアップザグリ内にビスで固定します。

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