二つのコイルを備えたハムバッキングピックアップはスイッチによる配線の切替えで複数のサウンドレパートリーを持たせることが出来ます。
ハムバッキングピックアップをスイッチでコントロールしてシングルサウンドの出力を行うコントロールをコイルタップ(タップ)と言います。このページでは、コイルタップのコントロール方法と配線方法を紹介しています。
コイルタップとは
コイルタップとは、ハムバッキングピックアップの2つのボビンのうち、どちらか片方のボビンをキャンセルしてシングルコイルとして機能させることを指します。
ハムバッキングピックアップの2つのボビンのリード線にスイッチを接続し、ボビン同士が直列配線となる通常のハムバッキング配線の状態と、片方のボビンをキャンセルしてシングルコイルとして機能させる切替えを行う配線コントロールが組まれたギターであればコイルタップサウンドの出力が可能です。
市販されているギターにコイルタップの機能が標準で装備されているかどうかはモデルにより異なりますが、コイルタップが標準装備されたギターの傾向には“どんなサウンドにも対応出来るオールマイティーなギター”をコンセプトにしているものが多い印象です。
This is オールマイティなヤマハのパシフィカもコイルタップの機能を標準装備しています。
コイルタップの機能は低価格帯のギターには装備されない傾向にありますが、パシフィカの場合には画像で紹介したものよりもさらに低価格なモデルにも標準で装備されています。コイルタップ機能を装備したギターの場合、装備しないギターと比べて部品単価は上がり作業工数も増えるのでコストは増しますが、低価格なモデルにもコイルタップを機能を搭載するパシフィカにはメーカーのこだわりを感じます。
コイルタップの機能が標準で装備されていないギターにおいては、そのギターを改造することによってコイルタップの機能を追加することが可能です。
ピックアップの構造や他のパーツとの兼ね合いでストラトのシングルピックアップのようなサウンドは出ませんが、ハムバッカ―サウンドとシングルサウンド(タップサウンド)の両方の出力が可能となるので、1本のギターで幅の広い表現力を持たせることが出来ます。
コイルタップに対応したリード線を備えたピックアップであれば、ミニスイッチの追加やスイッチ付きポットへの交換でコイルタップの配線を組むことが出来ます。
タップさせたいピックアップのリード線の種類によってはコイルタップ配線が不可能な場合があります。
イラストはハムバッカーのリード線パターンを記したものです。
①②④はコイルタップ配線が可能です。
①は4芯リード線(4Conductor)と呼ばれるタイプで、どのようなコントロールにも対応します。
②と④はピックアップ部分でボビン同士の結線部分が処理され、1本のタップ線(イラスト水色の線)として出力されています。
③と⑤はピックアップ根元部分で結線処理されており、タップコントロール用の出力線が無いのでタップコントロール配線は不可能です。
ピックアップ出力線の4芯化
写真のリード線パターンはイラストのリード線パターンの⑤に近い状態のものです。
中心がホットへ接続する線で、中心の線を保護する白い被覆と黄色い被覆の間にアース線があります。この場合にはタップが無い為、コイルタップのコントロールは組むことが出来ません。このピックアップでどうしてもコイルタップのコントロールを組みたい場合には、現状の状態にタップ線を組み込むか、3又は4芯リード線への交換が必要となります。
リード線交換にはピックアップの断線リスクがあります。ピックアップのコイルが断線した場合にはピックアップが修復不可能となることもありますので注意が必要です。
まずは、ピックアップに巻かれたアセテートテープを剥がします。このピックアップの場合はテープを剥がしただけでコイルの出力線とピックアップ出力線の接続口にアクセス出来ました。
各コイルの出力線と、それに繋がった黄色のピックアップ出力線を切り離します。
ピックアップリード線の切り離しが完了したら、それぞれのコイルの出力線に4芯のシールド線を繋いでいきます。
余裕がある場合には、接続前にコイルの位相の確認を行い、組み合わせるピックアップと4芯線の色の配置を同じにしてあげることで、後の配線が楽になります。
ピックアップリード線の切り離しが完了したら、それぞれのコイルの出力線に4芯のシールド線を繋いでいきます。
裸線はシールド線ですので、ピックアップのベースプレートにハンダ付けします。
以上がピックアップリード線の交換手順ですが、ピックアップの断線トラブルに繋がるリスクが大きい作業でありDIYでの作業はお勧めしません。
どうしてもという方はリスクを理解したうえで作業を行うか、お近くのショップさんに相談することをお勧めします。
コイルタップの配線例
上記配線図は1ハムのスタンダードな配線例です。ポット・ミニスイッチは裏から見た状態です。
ピックアップのアース線(ベースプレート・リードアース)は記載を省略しています。アース線がある場合はノイズ対策の為にポット裏等へハンダ付けしてください。
タップ配線には様々な方法がありますが、上記配線をベースに何種類かコイルタップ配線方法を紹介していきます。
タップ配線例 ①
ハムバッカーをタップさせる配線パターンは複数存在します。一番簡単な方法はボビン同士を結線したタップ線をスイッチを使ってアースへ落とすこちらの方法です。
イラストは6ピンのON-ONスイッチを使用してハムバッカーをタップさせる配線図です。
ボビン同士を結線している線とアースがスイッチで繋がった時にピックアップ右側のボビンが無効化されます。この配線方法がタップ配線のなかで最もポピュラーな方法ではないでしょうか。
他のタップ配線と比べた場合、スイッチの不具合に対して音が全く出なくなるリスクが低い配線方法です。
タップ配線例 ②
配線例①はコイルをショートさせるキャンセル方法ですが、こちらの配線例②は回路をオープンさせることによりコイルキャンセルを行う配線方法です。タップ時には左側のボビンのホットをオープン状態にして無効化します。
「これでもタップ回路は成立しますよ」という配線例です。配線を組む際にこの方法でなければ成立しない場合以外には自分はあまり採用しない配線方法です。
タップ配線例 ③
こちらの配線は4芯リード線の場合にのみ配線が可能な方法です。
スイッチはプッシュプルのスイッチ付きポットで組んでいます。トーンノブを引き上げた時に左側のボビンがキャンセルされるコントロールとなっています。
使わないボビンはオープンキャンセルされ、キャンセルコイルはアースへ接続される配線方法です。
配線例①の方法に比べて出力信号の劣化が少ない傾向にある配線方法で、配線例②よりもノイズを拾いにくい配線方法であり、タップ配線方法の中ではシングルピックアップの配線条件に最も近い配線方法です。
タップ配線例④
ON-ON-ONのスイッチを使用することでハム(series)とシングル(split)に加え、2つのボビンの並列サウンド(parallel)の出力も可能とした配線例です。
1つのピックアップで3種類のサウンド出力が可能となるコントロールです。
タップ配線例 ⑤
ON-OFF-ONのミニスイッチを使ってハムバッカ―・シングル右側・左側の3種類のサウンドを切り替えるタップコントロールです。
ダンカンのSHPRのように2つのボビン特性が大きく異なる場合に有効な配線例です。
タップ配線例 ⑥
配線例④はミニスイッチを増設してタップ切替を行う仕様ですが、ミニスイッチを増設するスペースが無い等の場合にはスイッチポットを使用してハム・シングル(右ボビン)・シングル(左ボビン)の切替えを行うことも出来ます。
スイッチポットは2つ必要となり、切替えパターンは4パターンとなりますので、残りの1パターンはそれぞれのボビンがパラレル出力になるように配線を組んでいます。
オートタップ配線
オートタップとは、レバースイッチによるピックアップセレクトに加え、任意のレバーポジションにおいて連動してコイルタップが行われるように配線が組まれたコントロールです。
オートタップ例①
レバー位置が↖︎(リア&センター)又は↗︎(センター&フロント)のポジション時にリア又はフロントのピックアップが自動的にタップされる配線コントロールです。
一般的な5WAYのレバースイッチは回路を2つ持っています。上の配線図では右側の回路をピックアップのセレクターに使用し、左側の回路をタップのコントロールとして設定しています。ミックスポジションを選択した時にはハムバッカ―のタップ線がアースへ接続されてタップされる仕組みです。
オートタップ例②
2ハムのピックアップセレクターは3WAYのスイッチで組まれている場合がほとんどですが、5WAYのスーパースイッチを使用することでタップサウンドの出力を追加することが可能です。
スイッチを増設する必要もなく、シンプルで操作性の良い配線コントロールです。
カスタムタップ配線
単純なタップ配線ではタップさせた時のサウンドに物足りなさを感じてしまう場合もあります。
そのような場合には、少し変わった配線を行うことで通常のタップサウンドとは違ったタップサウンドを出力させることも出来ます。
カスタムタップ配線例①
通常のタップサウンドは片方のボビンを無効化するものですが、完全に無効化しないことでハムサウンドのテイストを残したタップサウンドを作る配線方法です。
抵抗を使ってタップ線からアースへ逃がす信号の量をセーブした配線でPRS等が採用しているタップ方法です。
ハムバッカーとタップ時の音量差を少なくしたり、非力なタップサウンドに少しパワーを持たせる効果があります。
リアピックアップに2.2kΩを使用し、フロントピックアップに1.1kΩを使用したコントロールはPRSのタップで使用されている抵抗値と同じ数値です。
イラストのようなカーボン抵抗の代わりにポットや半固定抵抗を使うことで、タップした時にハムサウンドのテイストをどの程度残すかを任意にコントロールすることも可能です。
カスタムタップ配線②
通常のタップサウンドは片方のボビンを無効化するものですが、両方のボビンを直列回線から並列配線に切り替えてシングルコイル2つを同時出力させる配線コントロールです。
プッシュプルのスイッチ付きポットを使用した場合、ノブを引き上げることでハムバッキングピックアップが直列配線から並列配線に切り替わります。
通常のタップサンドでは何か物足りないという場合にはこちらの配線方法が有効かもしれません。
複合的なタップコントロール
スイッチ付きポットやミニスイッチでピックアップ単体のタップ切替を行わせるだけでなく、5WAYのレバースイッチの出力パターンを丸ごと変えてしまおうという配線コントロールです。
トーンノブが下がったⒶの状態では、5WAYスイッチは一般的なSSHのピックアップ切替えコントロールとなっていますが、トーンノブを上げたⒷの状態では、リアピックアップのタップサウンドをはじめ、通常のコントロールでは出力不可能なピックアップの組み合わせでのサウンドを得ることが出来ます。
ストラトサウンドに寄せたタップ配線
まず最初にシングルとハムのタップのサウンドの違いについて説明します。
ストラトのようなシングルコイルギターサウンドに対し、ハムバッキングピックアップを積んだギターのタップサウンドはストラトのようなサウンドにならない場合がほとんどです。
理由としては、そもそもギター本体の造りが違ったり、ピックアップの磁力やコイル特性が違ったり、ボリュームやトーンのコントロールに使用されているポットやコンデンサの容量が違うことが多く、それらの違いが出力されるサウンドに影響をするからです。
ハムバッカーを積んだギターはポットに500kΩ、コンデンサに223の容量のものが使用されることが多いのに対し、3シングルのストラトタイプの一般的なコントロールはポットに250kΩ、コンデンサに473が使用されます。
ポットの抵抗値は高いほど高音域のロスが少なくなります。
500kΩのポットに比べ、250kΩのポットを使用したコントロールでは高音域が控えめのマイルドなサウンドになる傾向になります。また、コンデンサも223に比べて473の方がより広い高音域をカットする傾向にあります。
ギター本体の構造やピックアップの磁力やボビン特性を変えることは難しいですが、タップしたピックアップにコントロールのパーツの容量を合わせることでストラトのテイストに近いシングルサウンドの出力を狙うことは出来ます。
ストラトサウンドに寄せたタップ配線例
ハムの時とタップ時でコントロールを切り替える配線を組んでみた場合、上のような配線となります。
こちらはストラトを意識した配線コントロールとなっており、タップ時にはリアピックアップのトーンコントロールがキャンセルされます。
配線は複雑でメンテナンス性は超最悪ですが、タップ時にはストラトと同じポット・コンデンサ容量のコントロール回路に丸ごと切り替わります。なので、フロント、センターのサウンドもハム時とタップ時では違うものとなります。
プレイヤーにとって、ここまでしなければ得ることが出来ないサウンドがあるのであれば組む価値が高い配線コントロールだと思います。
タップするボビンの選定
ハムバッキングピックアップのボビンはどちらをキャンセルしても間違いではありません。メーカーの配線図に指定がある場合は配線図通りに配線することでメーカーの推奨するボビンを生かすことが出来ます。
ピックアップはボビンの特性によってサウンドの傾向が変わります。
インピーダンスが低いと出力抑えめで高音域特性が良いサウンドとなる傾向が強く、インピーダンスが高いとその逆の傾向になると考えられる為、コイルの抵抗値から出力するコイルを選ぶのも一つの選択肢となります。
タップするボビンの位置によるサウンド特性の違い
①は外側のコイルをキャンセルする配線です。
②は内側のコイルをキャンセルしています。
ピックアップはブリッジに寄るほどタイトさが増したサウンドとなり、指板側に寄るほど温かみのあるサウンドとなる傾向にあるため、フロントとリアのタップサウンドにメリハリをつけたい場合は②のタップ配線を組みます。
③④は同じ規格のピックアップを使用した場合にフロントとリアのミックス時にハムキャンセル効果が生まれるタップ配置です。
①〜④までの組み合わせでどれが正解というのはありません。各ピックアップメーカーの配線図では、どのコイルを生かす設定にするかはメーカー毎に違っています。また、ピックアップを載せるギターメーカーについてもそれぞれサウンドの狙いがある為、ピックアップに付属する配線図通りのタップ配置としていない場合があります。
EMGのハム・シングル切り替え
その代表的なモデルに“89”というピックアップがあります。
89はデュアルコイルモードで85サウンドを出力し、シングルコイルモードではSAのサウンドとなるように設計されたピックアップです。デュアルモードではL1とL2のコイルを使用し、シングルモードではL2とL3を使用する構造となっています。片方のコイルをキャンセルする単純なコイルタップとは違うため、正式にはコイルタップではありません。
89Rというピックアップは89のリバースモデルです。89に対し、内部コイルの位置が反転しています。
モード切り替え機能を持つ89や81TWにはモードを切り替える為のスイッチポットが付属しています。このポットは青いジャンパーピン(写真右下)の差し替えでボリュームポットにもトーンポットにもなる優れものです。
また、ピックアップからのコネクターの挿し方でノブの上げ下げ位置に対し、どちらの位置でデュアルモード(シングルモード)になるかを選択して設定することが可能です。
EMG モード切替ミニスイッチコントロール
EMGのモード切替えはON-ONのミニスイッチで行うことも可能です。ボリュームやトーンのノブの上げ下げ操作では都合が悪い場合やギターのボディ厚が極端に薄くてスイッチ付ポットの取り付けが出来ない場合にはミニスイッチを使うという解決策があります。
EMGのアクティブピックアップはパッシブタイプのピックアップとは構造が異なる為、パッシブピックアップのように単純にタップ線をアースに落とすだけではハムとシングルの切替えは成立しません。
フロントに89R、リアに89を載せたギターの場合、フロントとリアのモード切替えを個別に行いたい場合は6ピンのON-ONを2つ使用します。1つのスイッチでフロントとリアの切替えを同時に操作したい場合には12ピンのON-ONスイッチ1つで配線を組みます。
EMGのオートタップ配線例
こちらの配線図はフロントにEMG89R、リアにEMG89のピックアップレイアウトのギターにおいて、ピックアップの選択と各ピックアップのハム・シングルのモード切替え機能をレバースイッチに集約した配線図です。
プッシュプルのポットでフロントとリアのモード切替えを個別に行うのが面倒な場合や、プッシュ・プルポットのノブが上がった状態ではアームを使う際に邪魔になってしまう場合に有効な配線方法です。
コントロールのレイアウトに縛りがあるような状況で、1ボリュームトーン無しのギターのようにスイッチ付きポットが1つしか設置できない場合には上の配線図のようにピックアップセレクターにモード切替え機能を組み込むか、スイッチの増設が必要となります。
EMGのオートタップ配線例②
HSHのピックアップレイアウトにおいて、ピックアップの選択と各ピックアップのハム・シングルのモード切替え機能をレバースイッチに集約した配線例です。
リアのEMG81TWはEMGの81をベースにシングルコイルモードが追加されたピックアップです。
EMG81TWを載せる場合に注意するポイントはピックアップザグリの深さです。81TWはピックアップ本体に厚みがあるので、ザグリが浅い場合にはピックアップが収まりきらない可能性があります。リアピックアップ下にフロントとセンターの配線を通す場合には、そのスペースも必要となります。
クリアランスが足りない場合、ザグリを掘り下げる等の加工が必要です。
FISHMAN Fluence タップコントロール
FISHMANのエレキギター用ピックアップであるFluenceのハムバッカーは、独自構造のコイルレス仕様でありながらコイルタップの機能を持っている不思議なピックアップです。また、コイルタップサウンド以外にもピックアップ単体で様々なバリエーションのサウンドの出力が可能となっており、“マルチボイスピックアップ”の異名を持っています。
ピックアップのモデルによってタップ配線の組み方が違いますが、ここでは上記イラストのように10番(H)と11番(CT)のコイルタップ 用パッドを備えたモデルでのタップ配線方法について記載します。
このタイプは1〜9番まではコネクター接続ですが、タップの配線に関しては直接ハンダでリード線を接続します。
Hはホットを意味し、CTはコイルタップ(タップ線)を意味しています。
HとCTのパッドに何も接続しない場合にはピックアップはハムバッカーとして機能します。
別仕様のモデルではVoice3端子がタップ端子となっているものもあり、その場合はVoice3端子に接続したコネクターリード線をGNDに接続することでコイルタップが成立します。
※詳細はメーカーHP参照
上の図はパッシブピックアップに置き換えた場合のリード線状況です。
フィッシュマンのピックアップはEMGとは違い、パッシブと同じ感覚でタップ配線を組むことが出来ます。
CTをGNDに接続するとマイナスポールピース側のコイルがキャンセルされます。
タップ配線の方法
Aのスイッチ接続の場合
イラストの右上のスイッチ接続の場合、レバー下方向の状態ではCTとGNDは離れた状態です。HもCTもどこにも接続されないオープン状態なのでピックアップはハムバッカーとして機能し、2つのコイルが機能する①の状態となります。
レバーを上方向に切り替えた場合、CT(タップ線)がGNDと接続されるのでキャンセルするコイルがGND側でショートして音が出なくなります。
この方法でキャンセルされるコイルはフロント用ピックアップの場合はネック側、ブリッジ用ピックアップの場合はブリッジ側となり、内側のコイルのみ機能するイラスト③の状態となります。
Bのスイッチ接続の場合
レバー下方向の状態ではCTとHは離れた状態です。HもCTもどこにも接続されないオープン状態なのでピックアップはハムバッカーとして機能します。
レバーを上方向に切り替えた場合、CT(タップ線)がH(ホット)と接続されるのでキャンセルするコイルがホット側でショートして音が出なくなります。
この場合、Aの時と反対のコイルがショートして音が出なくなる状態となる為、キャンセルされるコイルはフロント用ピックアップの場合はブリッジ側、ブリッジ用ピックアップはネック側となり、外側のコイルのみ機能するイラスト③の状態となります。
Cのスイッチ接続の場合
AとBのスイッチ接続を組み合わせたコントロールです。ON-OFF-ONのスイッチなので、レバー位置が中央の状態ではCTはHにもGNDにも接続されません。HもGNDもオープンな状態なので、ピックアップはハムバッカーとして機能します。
レバー上方向ではBのスイッチ接続と同じ状態となり、レバー下方向ではAスイッチと同じになる為、キャンセルするコイルを選択出来るタップコントロールとなります。
配線例
スイッチ付きポットを使用してフロントとリアのピックアップのタップコントロールを個別に行う配線図です。
ボリュームノブを引き上げることでパッドCTに接続したリード線がGNDと接続されます。この場合は上で説明したA接続のコントロール方法となり、キャンセルされるコイルは各ピックアップの外側のコイルになります。
まとめ
コイルタップの配線コントロール方法は、このページで紹介したもの以外にも多くのバリエーションがあります。どのようなコントロールにしたいのか、どのようなパーツを使用するかで組み方が変わってきます。
ハムバッキングピックアップは配線の組み方次第で様々なサウンド出力が可能ですが、あまり複雑なコントロールにすると操作性が悪くなって扱いづらいギターになってしまいます。また、スイッチが増えることで接点不良のようなトラブルリスクも高くなります。メンテナンス性や操作性を考えるとシンプルなコントロールが良いのかもしれませんが、魅力を知っている人からしてみたらコイルタップは外せない機能です。
ハムバッカ―のギターでシングルサウンドの出力も可能とするコイルタップは標準装備で販売されるモデルも多数存在します。サウンドバリエーションが増えることで表現の幅も広くなります。